CHASE YOUR DREAM INTERVIEW #02 ANCHOR CYCLING TEAM / ブリヂストン アンカー サイクリングチーム

ひたむきにペダルを漕ぎ、 先に進むための原動力に

前へ進むためにただひたすらペダルを漕ぎ続けるロードレースという競技。
日本を拠点に海外でも積極的に活動をしている
ブリヂストン アンカー サイクリングチーム5人の話しから、
様々な要素が何層も積み重なり、
互いを支えあってチームを作っている
このスポーツ独特の魅力に気づくことができる。

先を見据え、ペダルを漕ぎ続ける勇気

世界中の公道を舞台に順位と速さを競うロードレース。基本的には個人が順位を競うもので自転車版マラソンと例えられることもあるが、実際はマラソンよりやや複雑なスポーツだ。自転車に乗り一斉にスタートラインを切るのは100人以上。レースによって異なるが5〜9人ほどで編成されたチームで参戦する。特にロードレースがユニークと言えるポイントは、チームのなかで絶対的なエースがより上の順位でゴールできるよう、アシストが緻密にその環境を作り上げることにある。今回紹介するブリヂストン アンカー サイクリングチームの水谷壮宏監督の言葉を借りれば「勝つのはひとりだが、チームの協力がないと勝つことができない実に奥の深いスポーツ」ということになる。
ヨーロッパと比較すると馴染みの薄い日本国内にも、いくつかのロードレース大会が存在するが、その中でも代表的なのが、あらゆる自転車競技を統括するUCI(国際自転車競技連合)が主催する、この6月に開催されたTour of Japanだ。海外選手が数多く参戦し大阪・堺から東京・品川までを8日間に渡り走破するその大会の最終ステージにおいて第3位という結果を残したのがブリヂストン アンカー サイクリングチームに所属する内間康平選手。沖縄に生まれ、幼い頃から自転車に乗ることがとにかく大好きで、自然にロードレーサーとしての道を歩むようになった内間選手は、海外でのレースを幾多も経験し、今では日本におけるトップクラスの選手へと成長した。そして2016年8月に行われるリオデジャネイロオリンピックにも初めて出場することに。
「オリンピックがすべてではないですし、スタートしてしまえば他のロードレースと変わりません。ただ、普段ロードレースを見ない人からも注目してもらえるという点においては特別な大会です。日本から遠くリオまで届くそんな声援をパワーに変えて頑張りたいですね」

とはいえ、リオデジャネイロでのロードレースに日本から参加できる選手は、たった2名。内間選手にとって普段のチームとは異なった役回りが求められる。さらにリオデジャネイロの気候や特殊な路面状況は、実にチャレンジングな状況でもある。
「昨年走ったリオデジャネイロのコースは、特に登りがとても厳しく、舗装されていない場所も多いのでメカニカルトラブルが起きやすい。いろんな要素が詰まっている難しいコースなので、オリンピック本番までにきちんとコンディションを整えます」
他のスポーツと同様にロードレースも、日々の鍛錬とコンディションの維持が重要である。
「稀に自分と自転車が一体になっていないと感じることがあるんです。同じ装備、同じウェア、同じ漕ぎ方なのに前に進まないと感じる。でも、今までの経験から、コンディションが落ちた時の上げ方は分かっています。先を見据えペダルを漕ぎ続けてその状況に耐えていれば、その先でちゃんと結果を残すことができると僕は信じています」
実際、前述したTour of Japanでの内間選手の快走は、今シーズン前半の不調を乗り越えた末の結果でもあった。

常に目標と希望をもち、前へと進む

たとえばロードレースの本場と呼べるフランスは、ライセンスを取得すれば経験が乏しくてもそれぞれの町にあるクラブチームに所属することが可能。毎週のようにレースに参加できるなどスポーツとしての環境面が整っている。一方、日本はレース数が海外と比較して少なく、ロードレースという文化がなかなか発展していかない。選手をきちんと育成することが困難な苦しい環境にある日本において、積極的に海外のレースに参加するチャンスを選手に与えているブリヂストン アンカー サイクリングチームはそのなかで貴重な存在。チームの今後の目標について、水谷監督は以下のように語る。
「今、我々が属するのはコンチネンタルチームというランクなんですね。サッカーで言えばJ3のような位置づけ。日本のロードレースは海外よりも全体のレベルが低く、環境もあまり整っていない。日本のフレームと日本人のサイクリストを世界でアピールしていくためには、国際舞台で好成績を得て、ランクを上げていくことが必要なんです」
また、ヨーロッパの経験値を直接的にチームへと注入することもまた不可欠。ブリヂストン アンカー サイクリングチームはトマ・ルバ選手、ダミアン・モニエ選手というふたりのフランス人選手が所属する国際的なチームでもある。

そして、エースを勝たせるための裏方の仕事を担う若手選手の存在も重要になってくる。2014年に加入したチームの若手、椿大志選手。今、彼はアシスト役にまわることが多いが、アシストだからこそ個人のコンディショニングには細心の注意を払っているのだという。
「チーム全体の動きをきちんと見て、練習で最低限の調子を維持できるように内容を組み立てています。ペダルの漕ぎ方や、ペースが速い時にもフォームを崩さないようにすることなど、細かな部分を常に大切にするようにもしていますね」
ロードレースでは、チームメンバー各々に役割が与えられているが故に、ひとりも欠かすことができない。そのためそれぞれがベストコンディションであることが大切であり、日々の準備における細やかなディテールが、勝敗を左右するといっても決して過言ではないのだ。

真面目にものづくりに励むことがフィロソフィー

「リオデジャネイロの道路は重く、必死に漕いでも前に進んでいかないように感じる」と内間選手は言う。その“重さ”をできるだけ解消させるために、日々開発や設計を追求しているのがブリヂストンサイクルの技術チームだ。
「開発の過程においてプロトタイプをいくつか製作するのですが、その度に選手にテストをしてもらい印象を聞きます。乾いた感じがする、ぬめっとする、引きずっている感じがするというように、選手の言葉はときには曖昧なことも多いです。しかし、忙しい彼らの限られた時間の中で徹底的に会話を重ね、そのニュアンスを理解するようにしています」
自転車は完全な剛体ではないため漕ぐごとにフレームがわずかにたわむ。そのたわみが多くなると前に進まなくなり“引きずっている感じ”を引き起こす。しかし、たわまないようにフレームを硬くしてしまうと、今度は前には進むけれども「脚がパンパンになる」と選手は表現するそうだ。

「その中間を測り、ロスが少ないベストなバランスを探るのが私たち技術者の仕事です」選手の身体に合った特注品を、1台ずつ作ることができれば理想的だ。しかし、UCIに認可をもらった機材(フレーム)でなければレースに出場できないというルールが存在し、選手たちはあくまで市販車をベースにしたフレームで勝利を目指している。そのなかでPROFORMATという選手の乗り方を数値化できるコンピュータシステムを駆使し作られた最新モデルがRS9という市販車である。
「選手の意見を元にアイデアを出し、シミュレーションで検討して、実機で確認する。そしてレース後にはアンケートを取りフィードバックをもらうというプロセスを経てRS9は生まれました。そういった1つひとつの工程を丁寧に進めていくことがブリヂストンの自転車作りの哲学だと思います。奇をてらった真新しいものとは違って、本当に選手が必要としているもの、不必要なものを判断して進める。ものづくりはとても真面目に行われていくんです」
きわめてシンプルな構造の組み合わせから成る自転車フレーム。だからこそ、わずかな改良だけで速さも乗り味も大きく変わってくるのだと言う。100km以上を4~5時間かけて走行するロードレースでは約25,000~30,000回ペダルを漕ぐため、一漕ぎで進む距離がわずかに違うだけで大きな結果の差を生む。シンプルで奥が深いという点は、レースそのものと自転車作りに共通している部分だ。

チームが一丸となり、ひたむきにステップアップを目指していく。それには監督と選手、選手同士、選手と技術者との密なコミュニケーションが必要だ。ひたすらペダルを漕ぎ、前へと進んでいかなくてはならないロードレースは、日々の真摯な取り組みと支えあいが原動力となっている。リオデジャネイロオリンピックで、日本が誇る自転車にまたがる内間選手の雄姿、そして今後のブリヂストン アンカー サイクリングチームの躍進に期待したい。

内間 康平 / Kohei Uchima  ブリヂストン アンカー サイクリングチーム選手内間 康平 / Kohei Uchima  ブリヂストン アンカー サイクリングチーム選手

主な戦歴

2011年 ツールド沖縄(UCI2.2) 総合7位
2014年 ツールドシンカラ(UCI2.2)第1、第6ステージ優勝
2015年 アジア自転車競技選手権大会ロードレース 3位
ツアー・オブ・タイランド第1、第6ステージ優勝、総合2位
ツールド北海道 総合3位