社会

調達

ミッション

持続可能な調達活動を通じ
社会価値を創造する

私たちは、長期的に環境、社会、経済をよりよくしていくため、次に掲げる4項目をサプライチェーン全体に浸透させていくことで、持続可能な社会と価値創造の実現に向け、誠実に取り組みます。

  1. 1. 透明性
  2. 2. コンプライアンス
  3. 3. QCD(品質、コスト、供給)& イノベーション
  4. 4. 持続可能な調達活動

グローバルサステナブル調達ポリシー

ブリヂストングループの持続可能なサプライチェーンの実現に向けた活動は、ステークホルダーに環境面、社会面、経済面で長期的な利益をもたらします。この活動は、「グローバルサステナブル調達ポリシー(以下、調達ポリシー)」に基づいており、2050年を見据えた環境長期目標に掲げる「100%サステナブルマテリアル化」に沿ったものです。調達ポリシーは適正な調達先選定要件の明確化やベストプラクティスの促進、また、業界内におけるコミュニケーション促進や業務改善のツールとしても活用されています。

当社グループが調達する天然ゴムのサプライチェーンや、人権及び環境への配慮を含む持続可能な調達に対するお客様や消費者の皆様の関心がますます高まる中、調達活動を通じた持続可能な社会と価値創造の実現というミッションは一層重要になります。

本ポリシーの策定に当たっては、国連の「世界人権宣言」や「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の各種条約、ISO26000(社会的責任に関する手引)とISO20400(持続可能な調達に関する手引)など、広く社会に認められている人権の国際規範及び基本原則に細心の注意を払いました。

本ポリシーでは、児童労働、強制労働、土地の権利、労働条件、公平で平等な処遇を事業における5つの重要な人権課題として定め、今後ステークホルダーとの対話を通じてこれらの課題の原因を特定していくことを約束しています。本ポリシーをもとに、長期的に環境、社会、経済をよりよくするためにも、お取引先様と協力して持続可能なサプライチェーンの早期実現に貢献していきます。

※ ブリヂストングループでは、「1.継続的に利用可能な資源から得られ、2.事業として長期的に成立し、3.原材料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料」をサステナブルマテリアルと位置付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。

ポリシーの改訂

「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」(GPSNR)の要求事項を踏まえ、ステークホルダーの皆様の期待に応えるため、当社グループは2021年9月、調達ポリシーの一部を改訂しました。これには、2020年12月に発表した、2050年のカーボンニュートラル化を目指す環境長期目標および2030年までに当社グループが排出するCO2総量を50%削減する目標を反映しています。また、環境に配慮した調達の強化や人権尊重に関してお取引先様に実施いただきたい事項を追加した他、紛争鉱物への対応についても改訂しています。

ポリシー策定・改訂のプロセス

※ 基準年:2011年

焦点を当てている項目

本ポリシーは、下記の4項目に焦点を当てており、当社グループとお取引いただく際に必ず実施いただきたい事項と、持続可能なサプライチェーンの早期実現のために実施をお願いしたい事項とを定めています。

  • 透明性 ― 調達に関わるトレーサビリティの向上と、優れたガバナンス体制の構築を含めて定めています。
  • コンプライアンス ― 当社グループが事業を展開する国及び地域で適用される全ての法律と規制を遵守すべきことを定めています。
  • QCD(品質、コスト、供給)&イノベーション ― 高品質の製品とサービスをタイムリーかつ適切な価格で供給するとともに、国際社会の発展に寄与する革新的なテクノロジーを追求すべきことを定めています。
  • 持続可能な調達活動 ― 環境関連法令の遵守などの環境への責任ある調達活動、差別のない最低賃金の遵守や強制労働防止、結社の自由と団体交渉などの人権の尊重、安全で健全な働きやすい労働条件、水利用、土地の利用及び保全、防災、レジリエンス(変化に対処する能力)に関する事項に取り組むことを定めています。

推進体制

サステナブル調達ワーキンググループは、調達やサステナビリティ担当の経営層を含む、部門横断的で世界各地のブリヂストングループ従業員から構成されており、調達ポリシーや関連施策を策定・展開しています。また、グループ全体で行う取り組みや活動の進捗状況を確認し、グローバルサステナビリティコミッティ及びグローバル経営執行会議(Global EXCO)に報告しています。

2022年末には、「Bridgestone E8 Commitment」を軸として社会価値・顧客価値の創出に最大限貢献することを目指し、グローバル調達コミッティを設置しました。

※ Global CEOを含むメンバーから成り、グループの事業戦略と執行を監督する最高位の会議体

「グローバルサステナブル調達ポリシー」の実行

「グローバルサステナブル調達ポリシー」の導入以降、ブリヂストングループ全体で教育を実施し、中でも調達、法務、技術、顧客対応など数百におよぶチームの教育活動を積極的に行ってきました。
当社グループは、購買の量と頻度によってお取引先様を以下の3つのレベルに分類し、取り組みを推進しています。レベル1のお取引先様の多くは、タイヤ製品の原材料を取り扱うお取引先様で、主な原材料は天然ゴム、合成ゴム、スチールコード、ゴム薬品などです。国内外のおよそ1,000社のレベル1及び2のタイヤ原材料のお取引先様とともに、サステナブルな調達に向けた活動を進めています。

  1. ※1「ポリシー」における「必ず実施いただきたい事項」及び「実施をお願いしたい事項」への対応状況。
  2. ※2原料や製品がどこから調達され、どのように生産され、誰が関わっているか、および、これらの原料や製品の調達がサプライチェーンに関わる全ての人に与える影響を明確に知り、確認するための能力。

ポリシーの展開

当社グループのレベル1及び2の全てのお取引先様には本ポリシーをご理解いただいたかどうかの確認と署名をお願いしています。2018年の初版においては、99%を超えるレベル1及び2のお取引先様に本ポリシーに賛同いただいたことを確認しています。2021年に改訂された第2版では、2023年末までに、すべての主要なTier1のお取引先様に改訂した調達ポリシーを受領したことを確認することを目標とし、2023年3月末時点では87%のタイヤ原材料のお取引先様から調達ポリシーの受領書をいただいています。

ブリヂストングループは数年にわたり、お取引先様に「グローバルサステナブル調達ポリシー」などの当社の活動を十分にご理解いただくため、事業活動を行う様々な地域で「調達方針説明会」を毎年開催してきました。説明会では、本ポリシーで焦点を当てている、透明性、コンプライアンス、QCD &イノベーション、そして環境への配慮や人権の尊重といった持続可能な調達活動の4項目についてお取引先様にご説明しています。2022年は、主にグローバルと日本の事業における主要なお取引先様370社に日本での説明会にご参加いただきました。また、グローバルの年次「調達方針説明会」に、約610社のお取引先様を招待しました。

お取引先様への本ポリシーの展開活動はサステナビリティに関する国際的な調査・評価機関であるEcoVadis社により、「持続可能な調達」分野で80点という評価を得ました(全体では68点)。

※ 当社グループと直接取引するタイヤ原材料の一次サプライヤー

EcoVadis社によるアセスメント

ブリヂストングループは、EcoVadis社によるアセスメントを通じて、人権課題への取り組みをはじめ、お取引先様のサステナビリティへの取り組みを評価しています。同社のアセスメント結果をモニタリングし、定期的に社内に共有しています。「グローバルサステナブル調達ポリシー」に基づき、当社グループはお取引先様とともに持続可能な調達活動と競争力の向上に取り組んでいます。

当社グループは、新規及び既存のレベル1、2のお取引先様に対して、EcoVadis社による、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するアセスメントを実施しています。エネルギー消費、水、生物多様性、汚染、廃棄物、お客様の安全、労働安全、労働慣行、人権、汚職、贈収賄、不正行為、マネーロンダリング、持続可能な調達などに関するESG課題について、当社グループの「グローバルサステナブル調達ポリシー」に照らして評価しています。

当社グループはEcoVadis社のアセスメントに関して以下のような目標とKPIを設定しています。

  1. 1.2023年末までに、Tier1のタイヤ原材料のお取引先様との取引金額ベースにして95%以上がEcoVadis社のESGリスクアセスメントを受審。
    (2023年3月末時点では97%が受審しています。)
  2. 2.2023年末までに、すべてのTier1の天然ゴムのお取引先様がEcoVadis社のESGリスクアセスメントを受審。
    (2023年3月末時点では94%が受審しています。)

2023年3月末時点で、73%のタイヤ原材料のお取引先様(レベル1、2)に、EcoVadis社によるアセスメントを受けていただきました。そのうちの74%が、当社グループが定める持続可能な調達活動の基準である、総合平均45点以上のスコアを満たしています。

お取引先様の改善支援と監査

ブリヂストングループでは、第三者機関の評価を用いてお取引先様の環境・社会パフォーマンス・ガバナンスを数値化し、お取引先様に必要な解決策の助言や支援を行い、改善を促します。

調達ポリシーの内容とアセスメントの結果に基づき、お取引先様のESG活動の改善に向けた支援として、各地域において持続可能な調達のためのセミナーを実施しています。

天然ゴムの持続可能な調達

タイヤ・ゴム業界におけるグローバルリーディングカンパニーとして、当社グループは、世界的な天然ゴムの需要増加に連動して、各社の調達量が拡大することにより生じる環境、社会リスクなどにも取り組んでいます。

当社グループでは、バリューチェーン全体で持続可能性を具体化しながらも、特に天然ゴムの持続可能な調達に注力しています。その中において、特に調達ポリシーに記載されている、環境への取り組み、人権の尊重、公正な労働慣行の支援、そして透明性の向上に取り組んでいます。また、森林破壊の防止にも取り組んでおり、調達・生産活動を通じて、気候変動や野生生物の保全にとって極めて重要な原生林や高保護価値(HCV)、高炭素貯蓄(HCS)地域の保護・再生を進めています。

天然ゴムは再生可能な資源であり、世界で何百万人もの人々の生計を支えています。天然ゴムのサプライチェーンは複雑に何階層にもわたっており、原料ディーラー、加工工場、ゴム製品製造業者や小規模農家などで構成されています。また、天然ゴムは様々な消費者向け製品の主要原料となっていますが、その7割はタイヤに使われています。天然ゴムの大半は東南アジアの小規模農家や大規模農園で栽培されており、栽培に600万人以上が携わっているとも言われています。

当社グループは、この天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティと透明性向上に向けた取り組みを積極的に推進しています。

天然ゴムのリスクを一層厳しく管理し、持続可能にするために、当社グループは天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティ向上の取り組みとデジタルツールを活用した現地監査の実施を推進していきます。トレーサビリティを確実に向上させるため、現地とのパートナーシップを活用して、現地農家においてデジタルツールのトライアルを実施しています。リベリアでは、自社農園だけでなく小規模農家についても、環境指標や社会指標などと共に農園の特性を見える化できる新しいデジタルツールを導入する取り組みを行っています。

こうした取り組みを強化するため当社グループは、2023年末までに、小規模農家を含む天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティを30%以上確保することを目標としており、2022年末時点では33%の天然ゴムのお取引先様を特定しています。

  2021年 2022年
天然ゴムサプライチェーンにおいてトレーサビリティを確保している割合 25% 33%
スクロール

※ Tier1のお取引先様からの自己申告ベース

デューディリジェンス

WWFとの協働

2020年、サステナブル調達ワーキンググループは、国際的な環境保全団体である公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンとの協働を開始しました。これはブリヂストンのサプライチェーンが、とりわけ人権尊重や環境保全などについて「グローバルサステナブル調達ポリシー」に準拠しているかどうかを確認するデューディリジェンスプロセスを検討し、開発するためのものです。本協働は、持続可能な天然ゴム生産の強化と小規模農家の生産能力向上の支援を目的としています。

農園でのESG現地監査

また、2021年には社外のステークホルダーの皆様からのESGリスク管理の要求が高い天然ゴムのサプライチェーンに着目し、ESGのデューディリジェンス活動を推進しています。天然ゴムのサプライチェーンにおけるESGリスクを特定・評価するために、Verisk MaplecroftならびにEcoVadisと協働しています。さらに、Verisk MaplecroftとEcoVadisのアセスメントの結果に基づき、対象となるお取引先様を選定し、WWFと連携して開発したSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を使ってESG現地監査を実施しています。

サステナブル調達ワーキンググループは2022年、WWFジャパンとの協働で、児童労働、強制労働、森林破壊などの業界特有のリスクを含め、「持続化可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)」のポリシーフレームワーク外部リンクに沿ってサステナビリティに関するリスクを評価する、デューディリジェンスプロセスを確立しました。当社グループはこのプロセスに従ったESGデューディリジェンス活動を加速化し、目標としていた21の天然ゴム加工工場と9つの天然ゴム農園でのESG現地監査を2022年末までに実施しました。2023年は、33の天然ゴム加工工場でESG現地監査を実施予定です。

監査でリスクが特定された場合、当社グループは継続支援を行い、天然ゴムサプライチェーン全体のリスクを低減するため、お取引先様と共にリスクを予防・緩和する計画を策定します。これまでの監査では、人権侵害や森林破壊活動などの具体的なリスクは特定されませんでした。

上記リスク評価におけるESGリスクについては、当社グループはGPSNRのポリシーフレームワークで言及されているリスクに焦点を当てています。天然ゴムのサプライチェーンで最も弱い立場にあるのは、経済的に不安定でサプライチェーン全体において他社との力関係で不利な小規模農家です。当社グループでは、小規模農家の持続可能性のリスク状況をより正確に把握するために、自己評価アンケート項目の最適化に取り組んでいます。

人権デューディリジェンスの詳細は「人権・労働慣行」のページをご覧ください。

小規模農家への成長支援

世界の多くの天然ゴムは、南米と東南アジアの熱帯雨林に生育するHevea brasiliensis(パラゴムノキ)から採取されます。森林の破壊リスクを回避するため、当社グループはパラゴムノキの苗木を小規模農家の方々へ配布するとともに自社農園向けに開発した生産性向上技術の研修も行い、合計2,000の小規模農家を支援しています。当社グループは2005年から、インドネシアとリベリアで計500万本以上の苗木を小規模農家へ配布し、世界では総額約2億3,540万円に相当する苗木を寄付しています。さらに当社グループではゲノムデータを利用して育種技術や栽培方法を改良し、パラゴムノキの病害耐性や生産性の向上に貢献しています。

※ 1ドル=110円で換算

天然ゴムのサプライチェーンにおける生産性と持続可能性向上支援

世界の天然ゴム需要は上昇傾向を辿っている一方で、森林保護に向けた企業の自助努力やそのための法整備など農園拡大への制限がますます強固になることが予想されます。さらに、天然ゴムはタイヤ製造で持続可能な原料ではありますが、収穫量が少なければ、小規模農家が天然ゴムの栽培では生計を立てることができず、他の作物栽培に切り替える可能性があります。そのため、天然ゴムの小規模農家の生産能力を強化し、収穫量と収入を上げ、小規模農家が森林破壊や他のESGリスクの原因にならないようにすることが、当社グループにとって重要な活動になります。

そこで、当社グループとしての生産能力向上を目的に、サステナブル調達ワーキンググループの関連機能を結集して、「キャパシティビルディングタスクフォース」を2022年に設立しました。同タスクフォースは現在、当社グループの戦略とGPSNRの基準に沿った効果的で明確なKPIと中期目標の設定を行っています。

GPSNRはまさに多様なステークホルダーが参加する包括的なネットワークであり、非常に幅広く複雑な問題に取り組んでいます。他タイヤメーカー、自動車メーカー、加工・製造業者、小規模農家、市民社会と協力し、資源や知識を共有しながら、天然ゴム業界の持続可能性向上に向けた当社グループの活動に参画するための有効なプラットフォームとして機能しています。

当社グループは、小規模農家の生産能力と持続可能性を強化するために2023年にGPSNRが中心となって実施する取り組みの支援として、GPSNRに6万ドル(約790万円)を寄付し、GPSNRから重要な支援企業として認められました。

当社グループはGPSNRの生産能力強化プロジェクトへの寄付に加え、有効な支援を実現するために「小規模農家ワーキンググループ」に積極的に参加し、小規模農家の意見をGPSNRの活動に反映させるべく取り組んでいます。小規模農家の作付面積あたりの収穫量を増やすことで生産能力を強化するための支援を行うために、GPSNRの「責任共有フレームワーク」での議論に主体的に参加し、最も公平な賃金分配メカニズムを構築、リソースと知識を共有し、メンバーの天然ゴムの持続可能性を高める取り組みの評価・表彰について協議しています。

また、COVID-19感染拡大前、ブリヂストン シンガポール ピーティーイー リミテッド(BSSG)は100以上の天然ゴム生産工場を訪問し、天然ゴムの品質改善やトレーサビリティ向上のため、能力強化ワークショップを実施しました。さらに、EcoVadis社によるアセスメントのスコアの低かった天然ゴム生産工場を再度訪問し、支援を行いました。2020年はCOVID-19感染拡大対策として、お取引先様との会議をオンライン形式に切り替えました。これにより、BSSGは天然ゴムのサプライチェーンにおけるトレーサビリティ及び持続可能な調達の強化を継続して実施することができました。

トピック:Project Unnati(インド・ケララ州での持続可能な天然ゴムプロジェクト)

「Project Unnati」は、インド・ケララ州の2つの県(イドゥッキ県及びコッタヤム県)において、持続可能な天然ゴムサプライチェーン構築へ向けた当社グループの取り組みの一環として開始し、2024年までに5,000の小規模ゴム農家のゴム栽培能力を高め、生計を向上させると共に人権や環境に配慮したゴム栽培が可能となるよう、支援することを目的としています。

開発系国際NGOの支援のもと、上記2つの県でニーズを調査し、ゴムの品質、燻煙所やゴムシート準備の改善を実施しています。この支援は、ケララ州で実施されたニーズ調査の結果に基づいており、以下のような成果が期待されます。

a. サプライヤーに提供するゴムシートの品質向上:ゴム農家が供給するゴムシートの総合的な品質が5~7%向上
b. 質の高いサービスへのアクセス改善:4つのゴム生産者協会(RPS)を通じて推進される予定
c. 既存の燻煙所やゴムシート作成に関わる起業家10名の発掘と強化

病害診断技術の開発

世界のゴム農園の9割以上が集中する東南アジアでは、パラゴムノキが根白腐病に感染してしまう被害が深刻化しています。特に対処が効果的である感染初期段階における診断技術の確立が課題となっていますが、当社グループではドローンや人工知能(AI)を利用した早期診断の技術を開発しました。

詳しくは「貢献の最大化」をご覧ください。

自社農園における地域貢献

当社グループが自社農園を運営するにあたり、自然と共生し、地域の農園や小規模農家と共存することが不可欠だと考えています。

当社グループの自社農園では、安全かつ清潔な水や無償の医療サービスを提供し、また幼稚園から高校まで23の学校を運営し、300名以上の教員が従事しています。そして持続可能で安価な電力供給を確保できるように再生可能エネルギーも導入しています。

特に東南アジアでは、自社農園で開発した生産性向上の技術支援をしており、毎年、数百の小規模農家が高品質のパラゴムノキの栽培や移植、病害の防除や最適な採取方法のワークショップに参加しました。

天然ゴムサプライチェーンのグリーバンスメカニズム

当社グループは、持続可能な天然ゴムのサプライチェーン確立に向けた取り組みの更なる改善を目指し、2022年に天然ゴムサプライチェーンを対象としたグリーバンスメカニズム(Grievance mechanism:苦情受付・解決の仕組み)を構築しました。お取引先様や第三者専門機関と問題解決を図り、苦情(グリーバンス)への対応状況を四半期ごとに公開することを、目標及びKPIとして設定しました。2022年2月に第三者機関NGOのEarthwormの協力のもと、グリーバンスメカニズムを構築、運用を開始し、当社Webサイトで公開しています。

このグリーバンスメカニズムは、人権等の問題を取り扱い、通報者の秘密・匿名性を確保しています。天然ゴム農園、配送、加工業者といった、当社の天然ゴムサプライチェーンに関わるグループ内外の全てのステークホルダーが利用でき、企業、組織に所属する従業員の方々を含むステークホルダーの皆様から提起された苦情(グリーバンス)に対して、当社のグローバルサステナブル調達ポリシーに基づき、お取引先様や第三者専門機関と問題解決を図るものです。また、必要に応じ、「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」(GPSNR)とも連携して対応します。当社グループはグリーバンスメカニズムの透明性を確保するため、以下の当社Webサイトで標準作業手順書(SOP)、苦情受付窓口、苦情への対応状況を公開していきます。

詳しくは「グリーバンスメカニズム(英語のみ)」をご覧ください。

「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」


当社グループは、サステナビリティの取り組みを着実に進めていますが、さらなる向上のためには業界全体の協力が不可欠だと考えています。当社グループは、同業他社とともに「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」(GPSNR)を始動させました。GPSNRを通じて、人権尊重の促進、土地収奪や森林破壊の回避、生物多様性や水資源の保全、天然ゴムの収量の向上、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ向上のための基準づくりを進めています。

天然ゴムの持続可能な調達の強化に向け、影響力があり広範囲におよぶ貢献をするために、当社グループのサステナブル調達ワーキンググループは、GPSNRにおけるすべての主要な取り組みと議論への関与を深めています。例えば、2021年にGPSNRがポリシーフレームワークを承認したことを受け、当社グループはGPSNRのメンバー企業がポリシーフレームワークの実施の進捗を報告するための報告要求事項の策定に携わり、中心的役割を担いました。2022年6月のGPSNRの総会で、上記の報告要求事項、メンバーによるポリシーフレームワークの実行を支援する「実施ガイドライン」、天然ゴムの持続可能性を強化する責任をサプライチェーン全社で適切に共有できる、バランスの取れた構造を構築することを目指した「責任共有フレームワーク」が承認されました。

2022年、当社グループはGPSNRのエクゼクティブコミッティのメンバーに再選され、同年後半には、GPSNRメンバーが自らの持続可能性レベルを情報開示する際に役立つ、業界全体の保証制度の構築を目指す議論を主導しました。

当社グループは、引き続きGPSNRのメンバーや、NGO、天然ゴムサプライヤー、お客様などの様々なステークホルダーとともに、天然ゴムのサプライチェーンの透明性とトレーサビリティ向上に向けた取り組みを積極的に推進していきます。

紛争鉱物のリスク管理

当社グループの調達ポリシーは、コンゴ民主共和国及びその周辺の紛争地域で採掘されている紛争鉱物(すず、タングステン、タンタル、金)も含めた、全ての原材料を対象としています。当社グループは、400を超える世界の企業や組織が参加する「責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)」が作成する報告テンプレートを用いて、サプライチェーン全体のリスク評価を行っています。紛争鉱物を含む可能性のある製品のお取引先様には毎年、この報告テンプレートの記入と当社へのご提出をお願いしています。

併せて当社グループは、タイヤ製品の原材料を調達する製錬業者を全て特定できており、いずれの業者も、RMIによる「責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)」を遵守しています。製錬業者が関連するRMAPに準拠していないことが疑われる、または確認された場合、サプライヤーは別の調達先、又は代替鉱物を見つけ出し、行動を起こすよう最善を尽くす必要があります。