社会貢献活動

「地域特有の課題」に取り組む社会貢献活動|各地域での活動事例|日本

イルカ人工尾びれプロジェクト

  • プロジェクトについて
  • 人工尾びれ開発ドキュメント
  • 開発者インタビュー

「色々な力を結集すると、すごく高いレベルのものができる。
フジは夢を実現してくれたパートナーです。」

(株)ブリヂストン 化工品技術本部長
加藤 信吾

─ 初めてイルカの人工尾びれ製作の依頼を受けたとき、どう思いましたか? また、この世界初の試みに挑戦しようと決意されたのはどうしてですか?

「じつは、最初に話があったときは断ろうと思ったんです。生き物相手の開発なんかしたことがないし、なにより忙しくて。ただ、沖縄から説明に来た植田獣医が非常に暑い情熱を持っていて、『この子をもう一度仲間と一緒に泳がせたいんです』とおっしゃった。イルカをこの子と呼ぶその言葉に、愛情の深さを感じて、心を動かされました。あとは、世界で誰もやったことがないという点も技術屋にとって魅力的でしたね。ちょうど正月休みの時期に入り、自宅でいろいろ実験してみた結果、なんとかなるかもしれないと感じてきて、だんだんその気になっていきました。」

─ 開発当初から様々な変遷があったと思いますが、現在の尾びれはどんな特徴がありますか?

「一番大きな特徴は、天然ゴムを主体としているため、非常に耐久性が高く丈夫であること。もうひとつは、以前のカーボンファイバーの芯材の代わりに、コンベアベルトに使っているハンプというキャンバスを何層か入れることで、非常に壊れにくくなったことですね。また、形状的には、造形作家の方がフジの娘や息子、フジにまだ尾ひれがあったときの写真を見ながら基本デザインをして、フジの家系に合った形になっていること。フジにぴったりフィットするので、今は非常に長時間つけてもほぼ問題なく泳いでいます。イルカのジャンプの高さから推測すると、尾びれには600キロから1トンの負荷がかかっているといわれます。それに耐えうる人工尾びれにするには、今後より固いものに改良するなど、まだ課題は残っています。」

─ 人工尾びれの開発でもっとも難しかったのはどんなことですか?

「フジがジャンプをするようになって、人工尾びれが何度も壊れてしまったときは、本当にジャンプに耐える設計ができるのか、不安でたまりませんでした。装着してほんの5分ぐらいで壊れてしまったときは、すごくショックでしたね。それと、フジが壊れたカウリングを蹴ってケガをしてしまったときは、かなり落ち込みました。
そんなときも、他のメンバーと一緒に『まだまだこれがベストじゃないよね』という話をして、できるところまではやってみようという気持ちでチャレンジできました。チャレンジした以上、なんとしても成功させて、いい思い出を持ちたいですから。」

─ 水族館の方々など、多くの方々とともに開発を進めていくうえで、どのようなことを意識しましたか?

「水族館のスタッフ、とくに飼育係の方は、イルカに対して自分の子どもや家族という感情を持っていますから、イルカに嫌な思いをさせたり、ケガをさせたりすることにはものすごく神経質なんです。ですから、その点は我々も非常に注意しました。」

─ 開発に携わって嬉しいと感じたことなど、このプロジェクトの醍醐味は何ですか?

「いろいろな分野の人たちの力が結集して、ひとつの目標に向かって進み、フジがそれに応えてくれて、少しずつハードルが高くなり、最終的には我々が想像もできなかった高いレベルのものができたこと。途中で挫折も味わったし、失敗しても簡単にくじけなければ何とかなるということも勉強した。技術屋としてとてもいい経験をさせてもらったことは、本当に幸せなことですね。
このプロジェクトに参加させていただいて、いい仲間たちに巡り合えてよかったなと思います。」

─ 加藤さんにとってフジはどのような存在ですか?

「フジは夢を実現してくれたパートナーです。」

─ 今後、このプロジェクトをどのように見守っていきたいですか?

「今後も要請に応じて、違うタイプの尾びれを作ることもあるかもしれません。ここまで来た以上、フジが生きている限りサポートしたいと思います。」