ニュースリリース

2006年7月7日
No.79

分子末端でシリカと直接化学的に結合する高シスブタジエンゴムの合成技術を開発
ゴム分子の微細構造を制御する技術NanoPro-Techを確立

 株式会社ブリヂストン(社長 荒川 詔四)は、分子末端でシリカと直接化学的に結合する新しい高シスブタジエンゴム(高シスBR)※1の合成技術の開発に成功致しました。

 タイヤ用のコンパウンドは、天然ゴムや合成ゴムからなるポリマーと、カーボンブラックやシリカ等からなる充填剤などが複雑に混ざり合うことで構成されています。ポリマーのなかでも高シスBRは、そのミクロ構造に由来する優れた低温性(低温時の柔軟性)、耐摩耗性や耐屈曲疲労性が特徴で、有用性が広く知られています。一方、シリカはウェット性能を向上させたり、転がり抵抗を低減させたりする効果があります。このため過去より、高シスBRとシリカを組み合わせた材料開発は行われていたものの、両者は相性が悪く、この2つの原料の性能を最大に引き出すには、両者の親和性(なじみやすさ)を飛躍的に高める必要がありました。

 今回、当社は、(1)モノマー※2を重合するための触媒を新開発して活性の高いポリマー末端を有した高シスBRを得る技術と、(2)この活性末端に最適な変性剤(ポリマーに特殊な機能を付与する薬剤)を反応させてシリカ反応性末端に変換する技術を組み合わせて、シリカ反応性の末端変性高シスBR(RCポリマー)※3を合成する技術を確立しました。

 RCポリマーを用いたシリカコンパウンドではシリカの分散と分配(配置のされ方)が改良されるため、例えば低温時には柔軟で路面をしっかり捉え、高温時には通常のポリマーを用いたコンパウンドと同様の硬さ(弾性率)を持つといった、優れた性能バランスを得ることに成功しています。当社は、路面温度の変化によるゴムの性質の変化を抑制する目的で、この新しいコンパウンドをスタッドレスタイヤの新商品BLIZZAK REVO2に適用致しました。

 また、こうした例に代表されるような、ポリマーや充填剤、その他の助剤などそれぞれの原材料を分子設計することによって、充填剤とポリマーの間の親和性を自在に制御することを可能とした新技術を、NanoPro-Tech(Nanostructure-Oriented Properties Control Technology)と命名致しました。この技術によってゴムの微細構造(モルフォロジー)を制御することが容易になり、その結果用途に応じて必要とされる性能を引き出すコンパウンドをより自由に調製することができるようになったものです。

 NanoPro-Techを活用して得られたコンパウンドは、タイヤの転がり抵抗を低減して環境性能を向上させたり、ウェットブレーキ性能をはじめとした安全性能を向上させるなど、様々な形で製品(タイヤ)への応用が可能です。
当社はこの材料設計技術NanoPro-Techで様々なコンパウンドを開発し製品へ適用することで、お客様により安全性、環境性に優れたタイヤを提供してまいります。

 本技術の詳細は以下の通りです。
1. RCポリマー(シリカ反応性末端変性高シスBR)の合成技術のポイント
(1) 新規重合触媒の開発
モノマーを重合しポリマーを得る際の触媒を新規に開発し、高シスBRでありながら鎖の末端が活性状態にあるポリマーの重合を可能にした。

(2) 末端変性剤の開発
上記ポリマーの活性末端や充填剤と容易に結合できるような、特殊変性剤(有機珪素系薬剤)を用いた変性技術を開発した。

以上で得られたRCポリマーを充填材と配合するとこの変性剤部分が充填剤と化学結合することで特長的なコンパウンドが得られる。

RCポリマー(イメージ図)

2. NanoPro-Techの応用例
(1) RCポリマーによるモルフォロジー(微細構造)の制御
一般にコンパウンドは天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)などの合成ゴム、ならびにカーボンやシリカなどの充填剤が複合体となっています。RCポリマー(末端変性高シスBR)は積極的にシリカを取り込む性質があるため、通常のコンパウンドと比較してBRの体積分率を増加させます。これによりBRの特徴である低温特性が改良されます。更にRCポリマーはBR相内でシリカを均一に分散させる特性を持つため、さらに低温特性を向上させる効果があります。

(2) 物性上の効果

上記のモルフォロジー制御の効果として、RCポリマーは、低温時は特に柔らかく、高温時には通常の材料並みの硬さ(弾性率)を持つようなコンパウンドを与えます。雪や氷の路面上(低温、且つタイヤトレッドの変形が小さい状態)では柔軟性に優れ、路面をしっかりと捉える一方で、ドライ路面(高温でタイヤトレッドの変形が大きい状態)では従来材料が与えるコンパウンドと同様の弾性率をもちます。


※1 : 高シスブタジエンゴム(高シスBR)
ブタジエンゴムを構成するモノマー単位のつながり方にはトランス、シス、ビニルの3種の構造があり、通常はこの3種の混成物となっている。高シスBRは90%程度以上の含有率でシス構造をもつブタジエンゴムのことで、低温特性に優れるとともに耐摩耗性及び耐屈曲性などに優れるという特徴を持つ。

※2 : モノマー
ポリマーの主原料、モノマーを繰り返し単位として重合することでポリマーを得る。

※3 : 末端変性高シスBR
ポリマー鎖の末端に充填材との反応性を持たせた高シスBR(ブタジエンゴム)。
RCポリマー:ReactoCisポリマー。
本件に関するお問い合わせ先
<報道関係>広報課  TEL:03-3563-6811
<お客様>お客様相談室  TEL:0120-39-2936
以上