サステナビリティに関する報告

第三者からのご意見

「ブリヂストン サステナビリティレポート2019-2020」
第三者意見

本レポートでまず目を引いたのが、サステナビリティを中核に据えた中長期事業戦略です。そこに社会価値・顧客価値の両立とありCSVのことかと思いましたが、実はレポートのどこにもCSVという言葉は出てきません。よく読むと、口当たりの良い掛け声としてのCSVではなく、社会課題の解決と顧客価値の向上を徹底的に追求すること、そして何より、社会価値においても顧客価値においても、その根底で求められているのはサステナビリティだという信念に裏打ちされたものであることが分かりました。そしてその実現のために、顧客を含めた様々なステークホルダーと共創する必要があると考え、その活動を実際に既に始めていることも分かりました。今年を第三の創業の時と捉え、新たな歴史を作っていくのだという覚悟がひしひしと感じられる中期戦略であり、決意表明であると受け止めました。

具体的な活動として、IT技術等を活用した次世代の社会を切り拓くソリューション創りなども印象的ですが、私が特に注目したのはマイルストン2030と環境長期目標です。本レポートで振り返っているように、ブリヂストンは2012年にマイルストン2020、そして2050年以降の長期目標を設定しました。3年から5年程度を「長期計画」とする日本企業が多い中で、超長期ともいえる2050年、さらにはその先を見据えたブリヂストンの視座に当時感服したことを今でも記憶しています。そしてその方向性が正しかったことは、今の世界情勢を見れば明らかです。

このマイルストン2020は1年前倒しで達成され、今回はより具体的になったマイルストン2030が設定され、また2050年以降の環境長期目標もCO2の部分が国際目標に合わせた形で進化しました。気候変動を取り巻く国際世論が急速に変化している中、今後はさらに次のレベルである1.5度目標と整合性のある目標を掲げ、その進捗を報告されることを期待しています。またマイルストン2030に掲げられているサーキュラーエコノミーについては、既に様々なアプローチが実践されていて、まるで教科書を読んでいるような錯覚を覚えたほどです。一方で、もっとも本質的なことは、新規投入資源を限りなくゼロに近づけることです。タイヤについて言えば、リトレッドなどで何回も再使用されることは素晴らしいのですが、すり減った、つまり削れたゴムはどうなっているのかという問題があります。マイクロプラスチックの排出源として懸念する専門家もいますので、こうした全体像についての情報開示もあればさらに良いでしょう。

本レポートを読んでもう一つ素晴らしいと感じたのは、モビリティとサステナビリティだけでなく、「一人ひとりの生活」、つまり人を重要な領域と捉えている点です。人が大切なのは当然なのですが、あえて3大領域の一つとして取り上げ、きちんと取り組もうとするところに強い意志を感じました。具体的な活動内容としては、各事業所において、それぞれの地域で必要とされている課題への社会貢献的な活動が多いようですが、私が興味を持ったのはラバー・アクチュエーターのような本業の技術を活かした貢献です。この分野においてもぜひこうした価値共創をもっと進めていただきたいと思いました。

そして人と言えば、ブリヂストンを支える社員も重要です。本レポートには残念ながらほとんど記載はありませんでしたが、ダイバーシティーや働き方の多様性についての様々な取り組みが既に進められているはずです。特に今後はコロナの影響、さらにその後のニューノーマルをどう創っていくかも含めて、働き方についてもビジョンや目標と一緒に開示いただければと思います。社員一人ひとりの能力、創造性が存分に発揮されることこそ、共創の原動力だからです。

もう一つ人に関わるところで、サプライチェーン上の人権もいま国際的に大きな課題となっています。ブリヂストンの場合には天然ゴムの農園、特に小規模な農家における安全衛生や労働人権が焦点になるでしょう。そうした農家支援の取り組みを進めていることはこれまでに別の機会にお聞きしてはいます。GPSNR(持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム)を創立メンバーとして立ち上げたこれからは、こうした取り組みを業界全体に普及させ、同時にさらに高次元のものにするべくリーダーシップを発揮されることを期待しています。このことはもっとも重要な原材料の一つである天然ゴムの安定調達にも直結しており、間違いなく価値共創にもなるはずです。

以上のように本レポートはブリヂストンの新たな価値創造ストーリーの始まりを予感させるものでした。ここまで明確なストーリーが出来ているのですから、これが財務パフォーマンスをどのように下支えするのかを示す、つまり真の統合報告に発展する準備は十分にできているように思います。今後かなり近い将来に、サステナビリティと財務パフォーマンスが完全に統合された情報開示へと進化することに期待しています。その際には、環境、社会、人についてもより定量的な分析や目標が必要になると思いますが、そのことでブリヂストンの先進性や競争力がより明確に示されると信じています。

足立 直樹氏

株式会社レスポンスアビリティ
代表取締役

足立 直樹

足立 直樹 博士