技術開発の現場TECHNOLOGY

免震ゴム

ologic

インフラ資材開発部
H.K.
2004年入社
理学部 物理学 専攻

※記事の内容及びプロフィールは取材当時(2015年12月)のものです。

技術の概要

近年、建築構造物の新たな地震対策として注目され、本格的な普及期を迎えている免震構法は、建築物の各柱下と基礎との間に「免震装置」を設置することで、地震時に建物へ伝わる力を低減する構法です。

現在、国内には3,600棟を超える免震建築物があります。病院や緊急施設、集合住宅、歴史的建造物をはじめ、最近ではハイテク工場やタワーマンション、超高層建築など、免震装置を採用する建物は増えていますが、中でももっともポピュラーな装置が免震ゴムです。

ブリヂストンでは、1980年初期から免震ゴムの研究をスタート。1995年の阪神・淡路大震災を機に、増産体制を整備し、国内シェア50%を占める製品に成長しました。 直径600mmから最大で1,800mmまで、サイズや種類を豊富に揃え、あらゆる構造設計者のニーズに対応する免震ゴムは、多角化事業の新たな柱となっています。

また、免震ゴムは、ビルなどの建築物だけでなく、道路橋を中心とする土木構造物の免震化にも用いられています。
阪神・淡路大震災以降、免震ゴムが採用された道路橋(免震橋)の数は増加し、現在では500橋を超えるまでになっていると言われています。

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技術の特徴

免震ゴムは、薄いゴム層と鉄板を交互に積層し加硫接着することで、鉛直方向には鉄板の補強効果によって非常に高い剛性を、水平方向にはゴム本来の低い剛性を保有し、高い鉛直剛性で建築物を支えながら、地震時には低い水平剛性で、建物に伝わる地震力を低減します。
技術上、最も重要なのは、一般的に60年を目安とされる建物の使用期間に対する長期耐久性をいかにクリアするかという点です。

ゴムは、酸素や熱によって劣化しますが、60年間使用された免震ゴムはありません。
ゴムは置かれる場所の温度が高いと劣化が促進されるので、材料実験をもとに温度と劣化速度の関係を確立し、高温下で短期間の劣化実験を行うことで、常温で60年に相当する劣化の状態を見ます。
免震建物の設計には、この手法を用いて予測した60年後の免震ゴムの性能変動のデータが活かされています。

こうした寿命予測の他にも、温度依存性、振動数依存性、履歴依存性、破断性能、クリープ特性など、豊富な実験データの蓄積は、ユーザーの信頼の礎となっています。

また、ブリヂストンのコア技術であるゴム材料技術をベースにした高減衰ゴム系積層ゴムは、ゴムに特殊な充填材を加えることで、復元ばねとダンピングの両機能を与えた製品で、他社にはない独自技術として好評を得ています。

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ブリヂストンならではのこだわり

建築構造の設計者にとっては未知の材料であるゴム材料を信頼してもらえるよう、多くの実験と解析を積み重ねながら、材料面、構造面での最適化を図ってきました。

開発当初は対象とする建物も低層・軽量で、想定される地震規模も小規模でしたが、現在は高層ビルへの適用など大荷重で、かつ想定される地震規模も大きくなるなど、免震ゴムの設計条件はより厳しいものとなっています。

また、100年住宅構想など、要求される耐用年数も長期化する中で、従来品以上に高い耐久性を持ち、変形性能が大きく、かつ荷重支持能力の高い免震ゴムの開発に取り組んでいます。

最近、力を入れているのが、構造設計者が免震ゴムを各柱下に配置する作業を援助する、免震ゴム配置計画支援プログラムLAP2+t (Layout Planning Assistance Program with Time History Analysis) など、ソフト面の技術開発です。

構造設計者は、地震応答解析を繰り返しながら免震ゴムの最適配置を設計しますが、この作業は経験と時間を要します。 LAP2+tでは、対話形式で再配置と解析を簡易に繰り返しながら最適配置の解を探索できることに加え、遺伝的アルゴリズム (GA) を用いて最適配置解を自動的に得るオプションも備えています。

※LAP2+tは、多くの設計者に使用してもらうことを目的として開発されたソフトで、無償でブリヂストン免震ゴムのホームページからダウンロード (登録制、ただしGAオプションは除く) することが可能。

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今後の展望

集合住宅や、災害時の緊急施設となる各地域の主要病院施設については、これまで数多くの実績があります。
そのほか、最近では高層マンションや、大阪市の中ノ島公会堂、東京駅丸の内側駅舎など、保存価値の高い歴史的建造物にも、ブリヂストン製免震ゴムが使用されています。
半導体工場など、ハイテク工場への使用も増えていて、今後はBCP (Business Continuity Plan) 対策の観点からも、産業施設への免震適用の増加が期待されます。

海外ではロサンゼルス市庁舎やPIXAR アニメーションスタジオなど米国西海岸のほか、台湾やインドネシアなど、地震の多い環太平洋エリアを中心に納入実績があります。

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将来への期待

免震装置は、今後も普及していくと思います。 従来の免震装置では免震構造の適用が難しかった軽量建物や、超高層ビルなど、対象となる建物の種類や用途が広がることが予測される中、ブリヂストンではユーザーのニーズに適合した製品開発の推進に力を注いでいます。

また、世界には日本同様、数多くの地震被災地域があるので、ビジネスの拡大だけでなく、免震技術の先進国である日本の代表として、世界への貢献を図ることも、免震ゴム技術における世界のリーディングカンパニーとしての役割といえると考えています。

2005年に正式発効された免震ゴムの国際規格 (ISO227629) についても、ブリヂストンは原案作成段階から積極的に参画し、多くの貢献を果たしています。

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