【ブリヂストンの師匠と弟子】新しい素材開発に挑む2人

ブリヂストンで、先輩社員から後輩社員に伝わる一子相伝（？）の技術や考え方、お客様や仕事への思い。そこには、「師匠と弟子」の関係に似た、熱くドラマチック、でもなんだか身近な物語があります。ブリヂストンの意外な姿が垣間見えるかも！？
今回取り上げるのは、新しい素材の開発に携わっている(株)ブリヂストン先端材料部門のオリビエタルディフ社員と福島里佳社員。実験（リアル）と計算科学（デジタル）のスペシャリストとして日々新しい素材の研究開発に励む二人に仕事内容や今後の目標を伺いました！

お互いの最初の印象と仕事内容は？

オリビエ　「師匠と弟子」というよりは頼もしい同僚かな（笑）。福島さんと初めて会ったのは2009年、私がブリヂストンに転職してきた時だったね。私が新素材の開発担当で、福島さんは別の課で素材の性能評価を担当していて、一緒に新しい素材の研究開発に当たっていた。その後、2010年に、福島さんが数値シミュレーションなど計算科学^※の担当に移ったんだよね。
※計算科学：数学的モデルとその定量的評価法、数学的な計算を通じて、デジタル技術でシミュレーションや科学的な裏付けを行う手法

福島　よく覚えています。フランスの方と接するのは生まれて初めてだったので緊張しました。それと、最初は気難しそうなイメージがあって…。でも、オリビエさんと実際に一緒に仕事をしていくうちに、すごく気さくな方だと分かって安心しました。オリビエさんは化学反応を促す触媒の設計やポリマー（ゴムや樹脂などの高分子化合物）重合反応の専門家で、一流の科学者というと近寄りがたいイメージがありますが、質問に対しては丁寧に答えてくれるし、会うといつも「元気？」って声をかけてくれますよね。多くのことを教えてくださるオリビエさんは、私にとって「師匠」でもあるのかなと思っています。

オリビエ　そう思ってもらえているとうれしいな。福島さんは物静かですごく真面目だよね。決められた仕事の期日はしっかりと守ってくれるし、何かを伝えると私の日本語が完璧でなくてもすぐ理解してくれて、助かっているよ。…ただ、少しずつ気が強くなってきているように感じる（笑）。最近は仕事に自信がついてきたみたいで、福島さんからの要望や依頼もよく受けるようになったね。

福島　それは業務内容が変わったことと関係があるかもしれませんね。当初は、「未知の新規素材の機能を評価する」のが主な業務で、業務経験も浅かったためどちらかというと受け身だったように思います。今は計算科学を使って新しい素材開発のアプローチを提案する立場なので、私からオリビエさんに実際の素材での実験をお願いすることも増えました。

オリビエ　福島さんの場合、計算科学を担当するにあたって、一から知識やノウハウを蓄えたのがすごいよね。当時、ブリヂストンの中には計算科学を手がけている人はあまりいなかったから、同僚に基礎を教わりつつ、文献で学んだり、外部のセミナーに出席したり、大学の先生に教えを請うなどして、積極的に学んでいく姿は印象的だったよ。

世界初の素材開発

オリビエ　福島さんのこうした努力の成果もあって、2019年にはゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた世界初の素材「SUSYM（サシム）」を発表することができたね！

福島　SUSYMの触媒のメカニズムの解析では、時間が限られていて大変でしたが、私の持っている知識をフル活用して、複雑な化学反応に対して説明がつけられる結果となり、オリビエさんに喜んでもらえたのがうれしかったです。今後は、この解析結果を社外にも発表し、研究開発の客観的な評価を得るとともに、ブリヂストンの解析技術の更なる向上につなげていきたいと思います。

オリビエ　実は僕はあまり自信がなくて、自分の成果を発表するのはためらってしまうんだけどね…（笑）

福島　オリビエさん、たまに後ろ向きなことがありますよね（笑）。自分たちの成果はぜひ積極的に発表していきましょう。また、今は私が計算、オリビエさんは実験と別々に担当していますが、実験を行う方が自分の感性を計算科学に組み込むことで、新たな発見を得られることも少なくありません。オリビエさんにも計算科学をレクチャーしますので、ぜひ活用してほしいです！

オリビエ　ありがとう！これからの開発に生かしてみるよ！福島さんも計算だけでなく実験もやってみてよ（笑）。