免震レポート
「2016年 熊本地震」
Report
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「山鹿市民医療センターは山鹿市が経営する自治体病院です。当センターは山鹿市鹿本一帯の災害拠点病院として県から指定されています。災害時派遣医療チーム(DMAT)を2チーム持っており、今回の熊本地震でも活躍しました。また、地域医療支援病院として、地域の医師会の先生方と連携した医療活動を行っています。
免震構造の建物は、地上5階建の一般病棟です。併設する外来棟と管理棟(緩和ケア病棟)は免震構造ではなく耐震構造です。
一般病棟は2011年に新しく建て替えられましたが、建替計画自体は私がここに来る前から進められてきたので、免震構造の採用の経緯について詳しいことはわかりません。
以前、勤めていた医療施設は耐震建物だったので、当センターの新しい病棟が免震建物と聞いて少々驚きました。熊本は地震がないから安全だと言われていましたし、正直なところ免震構造と耐震構造の違いを意識していませんでした。職員も、免震建物で働いていることを意識していなかったと思います。」
「14日の前震、16日の本震の時は、当センターには入院患者さんが150名、ドクターとスタッフが20名ほどいました。地震発生時に免震病棟にいた方々に聞くと、建物に横揺れがあってキャスターが動いたという話は聞きましたが、上下の揺れはなかったようで、病棟等で物が倒れたという報告は受けていません。免震構造の効果はてきめんだと思いました。病院には医療器具がたくさんあるので、医療スタッフだけでなく、事務職も病院に集まり、被害がないか状況を確認しました。
一方で、耐震構造の緩和ケア病棟の患者さんから、ガタガタと音がして怖いという声があったので、免震病棟に移ってもらいました。揺れが少なくガタガタ音もしないことで安心されたようで、その後よく眠れたとおっしゃっていました。
私の自宅は益城町に近い秋津という町にあります。非常に大きな地震でしたが、自宅は一部損壊ぐらいで済みました。すぐに病院に連絡し、病院自体に被害はないと報告を受けました。16日の夜中に本震が発生。この時もかなりひどい状況でしたので病院に向かいました。病院では被害報告はなかったものの、当センターは災害拠点病院ですから、こうした時はDMATの派遣準備と被害者の受入準備をしなくてはなりません。
私を含め、職員が70名ほど集まり、対策本部を設置するかどうか検討しました。この時は、被害の状況収集に努め、結局、対策本部はつくりませんでしたが、待機は続けました。すると損壊がひどい阿蘇の病院から入院患者が10名ほどバスで移送されてきました。その後も医薬品が途絶えたということで、多数の患者さんが当センターに来られました。」
「当センターが免震建物であることは他の県内の医療施設にも知られています。特に被災した病院も多くあったので大きな病院の先生からうらやましがられることもありました。熊本県内のほとんどの病院は非免震建物と聞いています。今回の大地震で、いくつかの病院が使用できなくなりました。熊本県内の医療機関では建物が使えなくなったり、水漏れのため高額な医療機器が使えなくなったという話や、水道が止まったために透析で水が使えなかったなど、いろいろな被害が報告されています。
災害拠点病院は、3日間は確実に運営できるよう食料や医薬品等を備蓄しています。建物が免震構造であれば医療機器の被害は少ないケースがほとんどだと思います。災害拠点病院は被害時に安全でないと、被害者や患者さんの受入れが難しくなることがあるかもしれません。今から建て替える病院は免震建物にする必要があると思います。」