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BRIDGESTONE 世界への挑戦 日本国籍のチームが初の世界チャンピオンを獲得!!!

7月28日、土曜日に開催される「トップ10トライアル」は、鈴鹿8時間耐久ロードレースの見せ場のひとつになっている。

前日――27日の公式予選で10位以内につけたチームだけが参加でき、1周のタイムアタックで決勝のスターティンググリッドを決める。

今年は台風12号の影響で、上位10チームによる計時予選形式となったが、それでも「純粋に速さを競い合うタイムアタックセッション」は大いに注目を集めた。
その出走チームリストの中に、「F.C.C.TSR Honda France」の名はなかった。

藤井正和監督が率いるTSRは、鈴鹿8耐で常に表彰台を競うトップチームの一角であり、'06年、'11年、そして'12年と3度の総合優勝を果たしている。'11年から始まったトップ10トライアルには、昨年まで7年連続で全年出走していた。 しかし今年の公式予選の結果は、12位。トップ10トライアルの出場権を得られず、連続出走記録は7で途絶えた。

だが藤井監督は、そのことをまったく気にしていなかった。「予選のターゲットは11位だったんだ。12位に終わったのはちょっと残念だけどね」と言うのだ。
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予選で11位を狙う。つまりT SRは、最初からトップ10トライアル出場をめざしていなかった。
「今回の我々の目標は、あくまでもEWC(世界耐久選手権)でチャンピオンになること。トップ10トライアルに出れば王座獲得って話ならもちろん狙うけど、まったく関係ないからね」と、藤井監督は笑った。




チャンピオン獲得の障壁になるなら速ささえいらない
鈴鹿8耐は国内最大の二輪レースである。
総合優勝争いは、例年、国内メーカーのファクトリーチーム、もしくは国内メーカーとの連携が強いサテライトチームによって、極めて高い次元で繰り広げられる。「8時間のスプリントレース」と称されるほどハイスピードな展開だ。

その一方で鈴鹿8耐は、EWCの最終戦という位置づけでもある。
EWCにフル参戦している欧州中心のチーム群は、総合優勝狙いの「国内限定チーム」よりは少しばかり遅いペース、少しばかり下位のポジションで、シーズンを通した戦いを展開しているのだ。 つまり鈴鹿8耐では、総合優勝争いとEWCのランキング争いが、2層で展開していることになる。

そして今回のTSRは、「EWCフル参戦チーム」のひとつであり、日本国籍チーム初のタイトル獲得を目前にして、鈴鹿サーキットに乗り込んでいた。
第1戦ボルドール24耐、6位。第2戦ルマン24耐、優勝。第3戦スロバキア8耐、3位。第4戦オッシャースレーベン8耐、優勝。 4戦で146ポイントを獲得していたTSRは、「GMT94 YAMAHA」に10点差をつけ、王座にもっとも近いチームとして第5戦鈴鹿8耐に臨んでいたのである。

だからTSRは、トップ10トライアルに出走する必要も、総合優勝を狙う必要もなかった。決勝レースで、GMT94との一騎打ちに勝ちさえすれば、それでよかった。




絶対に崩したくなかった三位一体のバランス
「『トップ10トライアルに出走できないこと』について、すごく聞かれるんだよね。オレ、逆に聞きたいんだ。『トップ10トライアルに出走して頑張ったからって、何が得られるの?』って」と藤井監督は言った。

得られるものは、ある。上位のスターティンググリッド。多くの二輪レースファンからの注目。そして、ライダーとチームの自尊心が満たされるということ......。

だがそれらはすべて、「今回は要らないもの」だ。欲しいものはただひとつだけ、世界一の座だった。 バイクレースにおける「速さ」は、リスクを高めることでもある。藤井監督は徹底的にリスクを退けた。レースが終わった時に、GMT94より1点でも多いポイントを獲得していること。目的はそれだけだった。

「耐久レースで勝つために必要なのは、ライダー、マシン、チームの3要素の力が揃っていること。何かひとつが突出していてもダメ。何かひとつが劣っていてもダメ。いびつな三角形では絶対に勝てないんだ。ライダー、マシン、チームでキレイな正三角形を作らなくちゃいけない」

ブリヂストンのスタッフから「ル・マン24耐に出ない?」と言われ、「よし、出るよ」と参戦開始して以降、3年をかけてEWCを14レース戦ってきた藤井監督。
彼が得た勝利への方程式は、三位一体のバランスだった。そして「速さをアピールして自尊心を満たす」ことは、バランスを保つために控えるべき要素だった。




勝利に貪欲であること徹底的に突き詰めること――
7月29日午前11時半にスタートした決勝レースでも、藤井監督はバランスを保つことに徹した。コンディションが目まぐるしく変わり、セーフティーカーがたびたび導入される難しいレース。国内の主力チームがトップ争いを演じる中、TSRは決して目立ったわけではなかった。 それも、藤井監督の狙いだった。要するにランキング2位のGMT94の前にさえいればよかった。1時間経過時点でこそ、GMT94が13番手、TSRは15番手だったが、 以降1時間毎のポジションは6番手、5番手、5番手、6番手、5番手と、いずれもGMT 94の前だった。
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そして8時間を経過しゴールを迎えた時、TSRは5位、GMT94は6位でチェッカーフラッグを受けた。
その結果、TSRは狙い通り、EWC'17-'18シーズンの王座に就いたのである。 TSRは日本国籍のチームだが、ライダーはオーストラリア人のジョシュ・フック、そしてフランス人のフレディ・フォレイとアラン・テシェの3人だ。日本人はいない。EWCのシーズンを勝ち抜くための、ある意味ではドライな人選だった。

一方でマシンはホンダCBR1000RR SP2、そしてタイヤはブリヂストンと、あくまでも日本ブランドにこだわった。これもまた、勝つために必須の選択だった。
あくまでも、勝つために。すべては、勝つために。チャンピオンを獲得するためだけにTSRは鈴鹿8耐に参戦し、それを成し遂げたのだ。 「結局は、人。ひとりでは何もできない。オレには人が必要なんだよ」と藤井監督は言う。ドライにすべてを割り切っているようでいて、人の輪の中にいることに喜びを感じている。




みんなで喜びを分かち合う
その瞬間が訪れた時すべての労苦が報われる
EWCへの参戦を決めたのは、ブリヂストンの開発スタッフの「出ない?」という一言だった。

EWCチャンピオンを獲りたかったのは、みんなで喜びを分かち合いたかったからだ。

藤井監督を中心とした歓喜の輪には、ブリヂストンの山田宏さんもいた。TSRとともに勢いで世界GPにフル参戦したのは'91年のことだ。27年後の今年、TSRとともに世界の頂点に立ったのだから、感激はひとしおだった。
互いに「ありがとう!」と言いながら肩を抱き合った。
レースを勝つためには、冷静を極めた戦略立てが必要だ。だが、それだけでは足りない。人を巻き込むパワフルな情熱。その熱量こそが、不可欠なのだった。
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(出典:RIDERS CLUB 2018年10月号)

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