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4度目のオリンピックを目指す元僧侶・カヌー選手。現在地と、メダルを見据えたこれから

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北京2008、ロンドン2012、リオデジャネイロ2016。3度にわたりオリンピックに出場している矢澤一輝選手。僧籍(注釈1)を持ち、長野県の善光寺大勧進で僧侶として働いていたこともある異色のカヌー選手として知られています。

注釈1
僧、尼としての籍、身分(本文に戻る)

「カヌーに乗って水の上にいるときが一番安心する」と話す矢澤選手。しかし、彼の挑戦するカヌースラロームという競技は、全長250mから400mにもなる川の激流を漕ぎ下るというハードなもの。不規則に設置された20前後のゲートに触れないように通過しながら、タイムとポイントを競うワイルドかつスリリングなタイムレースです。

4度目のオリンピックを目指す元僧侶・カヌー選手。現在地と、メダルを見据えたこれから

父親の影響で矢澤選手がカヌーを始めたのは、小学1年生のとき。父がカヌーをするのを川に見に行ったことがきっかけです。自然の中で、ジェットコースターのような激しい流れの中を漕ぎ下る楽しさからカヌーに魅了された矢澤選手。父から「カヌースラロームという競技にはオリンピックという大きなイベントがあって、それには世界でも選ばれた選手しか出られないんだよ」と聞き、オリンピックを意識。北京2008オリンピックを目標にした挑戦が始まりました。

4度目のオリンピックを目指す元僧侶・カヌー選手。現在地と、メダルを見据えたこれから

初出場となった北京2008は予選敗退。しかし、ロンドン2012では日本人初の決勝進出を果たし、9位。それを区切りに、矢澤選手は僧侶の道へと進みます。そこには長野県カヌー協会会長で善光寺の住職を務めていた人の影響が大きくありました。
「僕が競技をしているなかですごく協力をしてくれて。2012年のロンドンオリンピックの前には、どうやったらトレーニングに集中できる環境がつくれるかを考えてくれました」
スポンサーを見つけるなどあらゆるサポートを受けた矢澤選手。そのうちに「こういう人になりたい、人に協力できるような人になりたい」と、恩人と同じ、仏門に入ることを選びました。

4度目のオリンピックを目指す元僧侶・カヌー選手。現在地と、メダルを見据えたこれから

夏は4時半過ぎに起きて15時頃まで御勤め。お寺の仕事が終わった後、矢澤選手のトレーニングの時間が始まります。
カヌースラロームは「激流の中でゲートをくぐる競技。自分の体をどう動かせばカヌーがどうついてくるのかということがすごく重要」で、高度と流れから次の動きを瞬時に判断することが求められます。僧侶の修行や日々の御勤めもすべてはトレーニングに通じているという矢澤選手。試行錯誤しながら精進していく点はカヌーと一緒だ、と話します。

その一方で、僧侶としての生活を続けながらオリンピックのメダルを目指すことの厳しさを感じ始めます。矢澤選手の住む長野県にはカヌースラロームができる環境はなく、ダムや湖などフラットな水の上での練習に限られてしまいます。リオ2016オリンピック出場を果たすものの11位という結果で決勝進出を逃した後、「東京オリンピックの舞台でメダルを獲りたい。それにどうやったら届くのか」を考えたとき、環境の変化の必要性を感じたといいます。

4度目のオリンピックを目指す元僧侶・カヌー選手。現在地と、メダルを見据えたこれから

3年半続いた僧侶生活に終わりを告げることを決意した矢澤選手。新天地として青森県の南西部に位置する西目屋村を選びます。コースが整備され、カヌースラロームの国内主要大会が開催されたこともあるその村は、トレーニング環境として申し分ありません。

拠点を移したもうひとつの理由に、村役場の職員として迎え入れてくれるという条件もありました。カヌースラロームに限らず十分なスポンサーの獲得が難しいマイナースポーツ。矢澤選手にとって、アスリートとしての競技生活を終えた後もその村で生活できるということは、より競技にも集中でき、安心感に繋がりました。

新しい環境を手に入れ、目の前に迫る大きな目標、東京2020の舞台。4度目のオリンピックに向け、矢澤選手の猛進は続きます。

矢澤 一輝
父親の影響により小学1年生でカヌーを始める。競技に集中するため、埼玉県の高校、大学へ進学。2008年、大学2学年時に北京2008オリンピックに初出場。2012年にはロンドン2012オリンピックに出場。日本人として初めての決勝戦進出を果たす。2013年に出家し僧侶となる。2016年長野県の善光寺大勧進で僧侶を務めながらリオ2016オリンピックに出場する。現在は競技に集中するため青森県西目屋村に移住。東京2020オリンピックを目指し、4大会連続出場への期待がかかる。

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