BWSC STORIES BWSCストーリーズ

ブリヂストンはBWSCを通じて、「Dream bigger. Go farther.」をテーマに人々の夢への挑戦を支えています。
ここでは、ブリヂストン ブルーピンググラウンドで開催された工学院大学、名古屋工業大学、呉港高等学校の三校による試走会の様子をご紹介します。

10名弱の高校から、400名弱の大学まで。3,000km走破を目指すソーラーカーチームが国内最終集結

わずか150kgほどの車が、時速100kmほどでタイヤの音のみを響かせ走り抜ける——。

2019年7月13日・14日の2日間、自動車レースを見た経験のある人であれば少し不思議な試走会がブリヂストン ブルーピンググラウンド(栃木県那須塩原市)で開催されました。エンジン音はもちろん、空力性能の高い車両はほぼ風切り音もなし。車が走っているとは思えないほど、コース上は静かでした。

このコースを走ったのは、二年に一度、世界中からチームが集結し、オーストラリアの地を南北3,000km、5〜6日かけ走破するブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(以下、BWSC)へ日本から参戦するソーラーカーです。

2019年10月の大会に参加するため、国内勢はこのコースでの試走に臨みました。この日参加したのは、工学院大学、名古屋工業大学、呉港高等学校の三校。今回BWSC Storiesでは、本年の大会に向け各校準備を重ねてきた新型車両と、大会へかける意気込みをお伝えします。

チーム10周年「勝つ車」を擁し優勝を目指す工学院大学

「今回は、勝つ車を作ってきました」

工学院大学ソーラーチームを率いる濱根洋人監督は、今回の大会に向け用意した新型車両“Eagle”を指し、こう語ります。世界環境デーのイベントでもお話を伺った濱根監督は、6月末に発表した今大会の新型車両と数十名の学生チームメンバーとともに今回のテストに臨みました。

濱根:今大会、我々は優勝を目指しています。そのために用意した新型車両“Eagle”は、ネイチャーモーフィング(自然模倣)という概念を取り入れ、特にノーズ部分には空気抵抗の小さいワシのくちばしのような形に仕上げました。軽量・低重心で、空力を向上させるために表面積を最小化。ソーラーパネルには発電効率が高い人工衛星用パネルを搭載しました。

試走時は、本番で使うパネルではなく、テスト用のシリコンパネルを装備

前回のBWSCでは、シリコンパネルと人工衛星用パネルを用いたチームで圧倒的に順位に差が付きました。工学院大学はその事実を踏まえ、コスト的には数十倍も差があるといわれる人工衛星用パネルを「勝つため」に調達し、今大会に挑みます。

工学院大学ソーラーチームは、2009年に設立。学生プロジェクトという位置づけで、学部・学科・学年を問わず、学内で希望すればチームに参加できます。現在は388名がチームに所属。キャプテンの尾崎大典さんは、このチームにかかる期待を以下のように語ります。

尾崎:今年は、チームが10周年を迎える節目の年。学校や先生方はもちろん、OBやスポンサーの皆様含め、さまざまな方々の期待がかかっています。今年は、今までの経験をふまえ、多くの改善点と向き合い車両を作り上げました。ここまでの知見を活かせれば、優勝含め、いいポジションまで持っていけると考えています。

2019年の大会は、そこから選抜された30名が現地で大会に参加。加えて日本にも70名以上ものバックアップチームを配備。位置情報や天気図を元に雲の動きを分析し、指令車へ連絡したり、他チームの動向を調査するなど、最低100名以上がサポートし、レースへと臨みます。

濱根:チームには、メディア部や総務部、財務部と部署があり、それぞれ専門性を持ち運営をおこなっています。ドライバーには4~5歳からカートを経験してきたメンバーや、学生フォーミュラの経験のあるメンバーなどもおり、今大会は万全の布陣で臨む予定です。

最小コスト・最少人数で完走へ——呉港高等学校

数百名にわたるチームに、数十社に渡るスポンサー、最新鋭の車両。

万全の体制のもと挑む工学院とは対照的スタンスで準備を重ねるのが、広島県呉市の呉港高等学校です。

武田:我々は高校ということもあり、開発費は他チームと比べ1〜2桁少ない額しかありません。材料もスポンサー企業から集めるのではなく、過去の部品の流用や、ホームセンターなどで調達できるようなものでまかなうなどして、作り上げているんです。

こう語るのは、チームを率いる学校法人呉武田学園 理事長の武田信寛さん。同校では教職員のスキルアップの一環として難易度の高い技術に取り組もうとソーラーカーの開発を開始。現在はエコテック部という部活動として10名弱の学生とともにレースに取り組んでいます。

呉港高校はBWSCの参戦は今回が4回目。2009年にはアドベンチャークラス3位の入賞経験もあります。その知見から、今回の車両では試走会に参加した他2チームとは異なる設計を選びました。

武田:今年の車両は、双胴型を選びました。車輪と車輪の間に空気を流し、前面の投影面積を少しだけでも減らそうと工夫しています。ソーラーカーの世界は、ほぼ空気抵抗との戦い。この設計が活きるのではないかと考えています。

高校の部活動という特性を活かし、車両の制作は学生の力が存分に活かされます。車体の型となるスタイロフォームの削り出しやFRPの流し込み、カーボンの張り込みや、金属部品の削り出しといった作業は学生の力を集め、人海戦術で進めました。同校が、この車両をもって今大会目指すのは、“完走”です。

武田:今回の車両は完走を目標に掲げ作ったものです。前回大会ではじめて完走を逃してしまい、今回はなにがなんでも完走したい。その気持ちのもと、準備を重ねてきました。

大会当日は、学生が運転免許の関係でドライバーを務められないため、教職員が運転も担当。

他チームと比べても最少人数、最小コストで挑む形となりますが、それもまたBWSCの楽しみ方。3,000kmを5日間で走り抜ける車両を作る技術は並大抵のものではありません。それを高校生とともに実現しようとする——挑戦自体に大きな意味があるはずです。

シリコンパネルでトップを狙う——名古屋工業大学

三校目は、愛知県の名古屋工業大学。同校はソーラーカー部という部活動として2015年からBWSCに参戦し、今回が三回目の挑戦です。チームマネージャーの磯合凌弥さんは、今大会の目標を「シリコンパネルでのトップ」と語ります。

磯合:今大会ではシリコンパネルの中でトップを狙っています。今のレギュレーションでは、どうしても人工衛星用パネルを用いた車両の方が、小さく、軽く、空力性能も高くなる。その壁を越えるのが容易ではありません。我々は、まずシリコンパネルの中で優勝し、ゆくゆくはシリコンでも人工衛星用パネルに勝てるマシンを目指していきたいと考えています。

同校が今回仕上げてきたマシンは、単胴型。2017年大会までは呉港高校と同様の双胴型で大会へ挑んできた名古屋工業大学でしたが、今回は空力の観点からはじめて単胴型を採用しました。

三次曲面を用いたボディ

磯合:この車両の最大の特徴は、アッパーに三次曲面を用いていることです。三次曲面を用いると空力はよくなるのですが、その分パネルの貼り付けやボディ製造の難易度が上がります。今回は製造をスポンサー企業にサポートいただき、ほぼCAD図どおりの三次曲面を再現できました。

名古屋工業大学のソーラーカー部は1993年の創部と歴史あるチーム。部員に加え技術面を支援する顧問・副顧問、ドライバーとして参加するメンバーを加えて、BWSCに向けたチームを編成しています。

磯合:工学院大学さんと比べると小さいチームですが、現状、学生だけで30名ほどの部活です。アドバイザーとして教授がついていただいていますが、基本的には学生がメイン。技術アドバイスをもらいつつ、設計等も自分たちで行い、自分たちが理想と思うマシンを形にし、走らせるチームなんです。

今回のテスト走行は、マシンが完成した状態ではほぼはじめての試走とのこと。他校と同様スタビリティの検証はしつつ、データ取得にも時間をしっかりと確保していました。

磯合:今回はデータを取り、オーストラリアの戦略に生かすという面が大きいです。マシンとしては、もう9割方完成していて、最後の調整なので、データを元によりよい戦略を練り今のマシンをどれだけうまく運用できるか。そこに焦点を当て、照準を合わせていきます。

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10月の大会に向け、追い込みをかける三校。

このほかにも、国内からは別日に試走をおこなう東海大学を含め四校が出場。世界23カ国から40以上のチームが大会に向け同様の準備を進めています。それぞれ掲げる目標も、担うチーム体制も異なりながら、目指すは同じ3,000kmの走破。各チーム正念場を迎えます。

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