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ブリヂストンはBWSCを通じて、「Dream bigger. Go farther.」をテーマに人々の夢への挑戦を支えています。
ここでは、BWSC19に出場する東海大学の新車発表会の様子をご紹介します。

「常に挑戦者であり、常に前に向かって進む」——歴戦の東海大学が満を持して発表した新車両の全容

「“どこまでやりきれるか”との戦いです」

BWSC(Bridgestone World Solar Challenge)で歴代二度の優勝を経験した、東海大学。

今年から同大学の総監督を任された、工学部電気電子工学科助教 佐川耕平総監督は、大会に向け開催された車両発表の場でこのように語りました。

先んじて投入した単胴型の経験を生かす「Tokai Challenger」

東海大学は、ブリヂストンがスポンサードする以前の1993年からWSC(World Solar Challenge)へ参戦してきたベテランチーム。2009年、2011年には優勝経験もあり、国内外からその動向が注目されるチームのひとつです。

国内外のチームが次々と新車両を発表し、大会に向けた抱負を語る中、日本から参戦するチームとしては最後となる9月3日、いよいよその車両「Tokai Challenger」を披露しました。

佐川:2017年大会は、発電効率のよい人工衛星用パネルを採用したチームが現れたと同時に、双胴型の車両が多かった年でもありました。今年は、このパネルを採用するトレンドが強まりトップ争いが激化することが予測される一方、車両は我々が2017年に先んじて採用した単胴型が中心。読みが当たったと実感しています。

佐川総監督の言葉の通り、今年の「Tokai Challenger」は、2017年の大会で採用し、設計面、技術面ともブラッシュアップを重ねてきた単胴型。前回大会で先んじて投入した経験を経て、更なる性能と完成度を追求したモデルです。

佐川:私たちのチームは2017年に続き単胴型を選びました。さまざまなモデルや形状を試行錯誤しましたが、やはりこの形状がよいと判断。2017年にやりきれなかった問題や大会を経て発見した課題などと向き合い、完成度を圧倒的に高めたモデルを用意しました。

その一部を紹介しましょう。

空力性能では、解析技術の向上や詳細な形状の再検討を通し、空気抵抗のさらなる低減、横風性能の向上を実現。車体内部やタイヤ回りの空気の流れも加味し、理論値ではなく実性能をいかに高められるかに注力してきました。

佐川:今回の性能向上に向けては、テラバイト級メモリを搭載した超大規模演算処理装置を利用したり、MicrosoftさまにMRゴーグルHololensをご提供いただき、車体に重ねて空気の流れをシュミレートすることで、より精度の高い設計環境を活かし、性能向上を実現しました。

加えて、10%以上の軽量化や、発電効率を加味して、ドライバーの乗車位置を220mm前方へ移動。大会内でのボディを傾けるオペレーションの向上のために、ボディの分割ラインの変更など、細やかな変化を通し、1g、1秒を削り出す努力を積み重ねてきました。

佐川:特に重量は勝負を続けている部分です。スポンサーでもある東レ様、東レ・カーボンマジック様とともに2017年車両の課題点の洗い出し、適切な強度と重量のバランスを突き詰めました。現時点で15〜20kgの減量に成功しており、このあとも各パーツで1gでも軽くできるようさらに調整を続けています。

そのほかにも数え切れないほどの改善を重ねた2019年版「Tokai Challenger」。いうなればこれまでの「経験」と「未来」を見据えた技術が上手く融合した一台に仕上がっているといえるかもしれません。その結果は、国内のテストコースでおこなわれた試走でもデータとして如実に表れているといいます。

「経験」と「未来」を組み合わせた盤石なチーム

今年の東海大は、この「Tokai Challenger」に限らず「経験」と「未来」を上手く混ぜ合わせた布陣をしいています。その最たる例がチームでしょう。

冒頭でも記した通り、佐川耕平総監督は、今年からチームの総監督に就任した人物。記者発表では、東海大学副学長の梶井龍太郎さんも、佐川総監督への期待を寄せている旨を語っています。 

梶井:これまで総監督は工学部の木村英樹教授が長年務めて参りました。しかし年齢もあり、今回からは新たに佐川耕平先生にそのバトンを渡しました。その若さで、ぜひ新しいパワーをこのチームに吹き込んでいただきたいと思っています。

佐川総監督は、同チームが所属する東海大学チャレンジセンターの第一期生。1999年、高校生の頃からWSCに参戦しソーラーカーレースに挑戦した後、大学卒業後はスバルへ就職。自動車業界でハイブリッドカーや電気自動車の先行開発を経験し、再び、ソーラーカーの現場へ戻ってきました。長年木村前監督が率いてきた東海大学に、文字通り新しい風を吹き込む人物でもあります。

ただ、すべてを刷新するわけではありません。今回大会は、学生陣の経験も豊富。佐川総監督もその点は非常に期待していると語ります。

佐川:今回、学生代表としてチームを率いる、工学部動力機械工学科4年の武藤創は2017年大会でも学生リーダーを務めていました。他のメンバーを含め、海外経験を積んできた学生が今年は多い。これは当日のオペレーションや現地の理解を含め非常に心強い体制だと感じています。

今回の遠征メンバーは留学生を含め27名。日本からも気象予想などの観点でサポートするメンバーを配備します。彼らに加え、ドライバー陣も盤石の布陣だと学生代表を務める武藤さんは自信を覗かせました。

武藤:ドライバーは佐川総監督をはじめ、2017年もドライバーを務めたNASA 特別アドバイザーのシッド ビッカナーバーさん、そして3年の小野田、2年の伊坪が担当します。小野田と伊坪は昨年の南アフリカ大会でハンドルを握っており、佐川総監督ほどではないですが、熟練のドライバー。今大会は期待できると思っています。

数十年もの歴史を誇る東海大学だからこそなせる、この布陣。「経験」を活かし、着実に「未来」へつながる姿をチーム面でも見せてくれました。

常に挑戦者であり、常に前に向かって進む

発表から、大会まではわずか1ヶ月半。

同大学の車両は直前までアップデートを重ねたのち、9月下旬にスポンサーのサポートを受けオーストラリアへと輸送されます。

ただ、本発表会後もギリギリまで調整は続き、秋田での試走の機会を設定。車両だけでなく、本番を想定したレース運用、タイヤ交換、コントロールポイントの練習など、レース本番で1秒を削り出せるオペレーション構築にも力を入れているといいます。

武藤:私を含めたチームメンバー全員、お互い苦しい思いを経ていまこの場に立っています。いい順位を取ろうと誰もが同じ方向を向き、やれることを最後までやりきる意思がある。大会はあくまでそれまでの成果を証明する場。大会までいかにもがけるかが、その結果を導くので、最後までやりきりたいと思います。

武藤さんの意思に、佐川総監督も言葉を重ねます。

佐川:我々の車両の名前は「チャレンジャー」です。常に挑戦者であり、常に前に向かって進む。目指すは世界のトップレベル。トップになれるよう最善をつくしていきます。

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