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アスリートとしての嗅覚を研ぎ澄まし、
もっともっと強くなりたい

窪木 一茂

  • インタビュー
  • 自転車競技・トラック
窪木 一茂

2018年の日本国内最高峰の大会で6冠を成し遂げた窪木一茂選手。東京2020オリンピックに向けて着実な努力と成果を積み上げている。何が彼を強くしたのか。常に心がけているというポジティブスピリットに、その秘密がありそうだ。

なりゆきで始めた自転車競技

窪木一茂選手

「進学した高校にたまたま自転車部があって......」

競技を始めたきっかけについてサラリとそう話す窪木選手。幼いころからスポーツが好きで、小学生の頃から夢はスポーツ選手になることだった。

「小学校でサッカー、中学校ではバスケットボールをしていました。でも、進学した高校のバスケ部で全国大会に出場するのは難しくて。個人種目への転向を考え始めたころ、自転車部で同じ町出身の先輩を見かけたんです。日本代表のジャージを着てトレーニングに励む姿がすごく印象的だったんですよね」

日本代表。その可能性が、15歳の窪木選手の心を捉えたのかもしれない。体験入学の後、勧められて入部を決断。たちまち結果を出した。2年生で兵庫国体で優勝。3年生でカナダの大会にジュニア日本代表として参戦し、最終日には日本人初のステージ優勝を飾っている。

「結果が出ると競技が面白くなっていきました。でも、一方で、当時自転車は今ほどメジャーでなかったし、練習ばかりでふつうの高校生ライフを満喫してないな、とも感じていたんです」

窪木一茂選手

競技を続けるために自転車競技の名門、日本大学に進学を決めたものの、練習が厳しいことで有名だったので抵抗感もあったとか。
上を目指したい。でも、厳しいのは嫌だ。そんな矛盾する思いが当時の窪木選手の中にあった。案の定、次々と脱落者が出る中で、窪木選手自身も優勝から遠のいた時期がある。しかし、やめなかった。

「ドラフト1位で学費免除で入学していますから、強い責任感や使命感がありました。期待に応えなければいけないという気持ちは、高校で親に高額な自転車を買ってもらったときからあったと思います」

同時に、わかったことがある。

「強ければいいってもんじゃないんだな、と。寮の仕事、たとえばトイレ掃除とか、当たり前のことを当たり前にすることが大事なんだと、この時代に気づかされましたね」

その後、大学3年から、窪木選手はインカレ等の大会で勝利を重ねていく。

ロンドン2012オリンピックの選考会で覚悟が決まった

窪木一茂選手

輝かしい成績にもかかわらず、窪木選手は自転車で生きていく決心がなかなかつかなかった。

「世の中自転車だけじゃない、視野を広く持ちたいというのが常にあって就職活動にも励みました。小学校のときにサッカーのポジションがボランチだったからかもしれません。視野を広くして、パスをもらったら逆サイドに展開する。全体の状況を見て判断するクセがついていたのかも」

転機は突然訪れた。大学4年でロンドン2012オリンピックの選考のため、海外遠征に出かけたときだ。

「たくさんの国旗がはためく中で走って強い高揚感に包まれ、あれ?オリンピックの雰囲気を味わっちゃったかな、と。自分でも思いがけないことでしたがオリンピックという舞台に近づいた気持ちがして、これは止められないと思ったんです。悩んだ末に、リオ2016を目指して自転車を続ける覚悟を決めました」

続けるからには本気で打ち込みたい。そう考えて、練習環境が整った和歌山県庁への就職を選んだ。

「そのときから生活が一変しました。時間の使い方でも、食事でも、大学時代は自転車の比重が6割ぐらい。あとの4割は好きにしていました。それがこのときから自転車が9割、いや、すべてと言っていいほど全力投球するようになったんです」

強くなるために学びたい

窪木一茂選手

社会人になってまず感じたのは、プロとのレベルの差だ。エリートの選手たちと走るたびに力の差を感じたし、もちろん成績も残せなかった。
今までのようにはいかない。その戸惑いの中で窪木選手は、落ち込むより先に「じゃあ、どうやって勝とうか」と考えた。
しかも、そこでとった手段はがむしゃらに練習、ではない。

「強くなるために学びたいっていう気持ちがとても強くて、いろんな人の話を聞きに行ったり、本を読んだりしました。僕は昔から勉強が得意じゃなくて頭の中にたいして何も入ってないから(笑)、吸収する余地があるというか、大事なことをどんどんインプットできている感覚が自分ではあるんです」

窪木一茂選手

例えば、競輪好きのある社長。紹介で知り合って、人生経験や自転車競技に対する考え方などを聞き、大きく影響を受けたという。

「新しい視点をもらえました。スポーツ界での自転車競技の位置づけとか、自分は何のために(自転車競技を)やっているのかとか、客観的に考えるようになりましたね。するともっと頑張ろうと思うし、頑張れます。アスリートとしての嗅覚でしょうか。この人は僕とインスピレーションが一緒で、絶対に何か得られると直感して、ボイスレコーダーで会話を録音したことも(笑)」

ポジティブであることの重要性について学んだことも大きい。

「ポジティブであれと説く人や本がどれだけ多いか。だから、困難とか挫折とか、あまり感じないようにしています。実際、感じていないかもしれません。やっても出来ないとか、何かを決める前に悩むとか、そういうことはもちろんあります。でも、それらも乗り越えてきていて、今振り返ると、あのときが壁だったんだとわかる。そういう意味では、壁というよりいい試練、チャンスなのかな、やっぱり」

困難は立ちはだかる「壁」ではなく、乗り越えて次へ行く「チャンス」。この思考こそ、勝者に必要な条件なのではないだろうか。

自分のためだけでない東京2020オリンピック

窪木一茂選手

県庁職員として働きながら、数々の大会に出場し、輝かしい成績を収めてきた窪木選手。勝つことへのこだわりも一層強くなったというが、それは「自分のためではない気がしている」という。

「今の職場はもちろん、以前の職場の同僚や地域の方、出身地の福島の方々、お世話になった方々、大学時代の友人、いろんな人の支えがあって、競技人生を続けています。サッカーやバスケなど団体競技が好きっていうのが根底にあるせいか、自転車の個人競技でも勝手にみんなを巻き込んで、自分のためだけじゃないって思っちゃうのかもしれないですね」

後輩やスタッフなど自分のために時間を割いてくれた人に対しては、必ず何かを返したいと思うそうだ。
東京2020オリンピックもまた、1人ではなくみんなで目指している。

「僕はリオ2016に出場しましたが、自分のためのオリンピックはそこで終わりました。東京2020は自分のためだけじゃない。チーム ブリヂストン サイクリングはじめ応援してくれる皆さんと一緒に戦うという気持ちです」

窪木一茂選手

自転車競技だけを見れば、もっと重要な大会もある。しかし、さまざまなスポーツ選手が結集するオリンピックには唯一無二のものがある。

「世界最高峰のアスリートたちが集まって、ハンパないエネルギーが集中してて、もう、ヤバいです(笑)。東京であの雰囲気をもう一度味わいたい。もう一度あの舞台に立ちたいと思って、日々練習しています」

トレーニングや食事を見直して、窪木選手はこの1年で体重を7kg増やすことに成功。筋量もグンと増えた。

「昨年の自分の成長を考えても、まだまだやれると思っています。もっともっと強くなって、エネルギーを貯めに貯めて、東京2020オリンピックですべて出し切りたいですね」

窪木一茂選手

PROFILE

窪木 一茂

窪木 一茂KAZUSHIGE KUBOKI

1989年6月6日生まれ。福島県出身、29歳。2016年リオ2016オリンピック自転車競技トラック・オムニアム14位、2018年全日本自転車競技選手権大会トラック・レースにおいて5種目優勝という快挙を達成。ロードタイムトライアルのチャンピオンでもある。現在の日本の自転車競技界トップの実力と実績を兼ね備えている。

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    近谷涼✕窪木一茂✕橋本英也 スペシャル対談

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