※このページはBridgestone 3.0 Journey Report(統合報告2025)に掲載された内容です。
「変化をチャンスへ」-
「守り」と「攻め」で、
「質を伴った成長」への道筋
を切り拓いていきます。
写真 吉成 大輔
ブリヂストンは、近年、地政学・サステナビリティ・技術革新などの様々な要因が複雑に絡み合いながら変化し、モビリティ業界及びタイヤ業界構造変化もこれまでにない規模感・スピードで進む事業環境に直面しています。2025年においても、米国関税影響などの「新たな経営課題」が生じ、グローバルで先行き不透明な状況が続いています。このような事業環境においては、変化に対して感度を鋭く持ち、迅速に対策をしなければ生き抜くことはできません。持続的な価値創造基盤をさらに強固に、強いビジネス体質を構築しながら、「変化をチャンスへ」変えていくことで、当社のビジョンである「サステナブルなソリューションカンパニー」を目指し、持続的な価値創造を実現したいと考えています。
不変の使命「最高の品質で社会に貢献」
ブリヂストンは、1931年の創業以来、「最高の品質で社会に貢献」を使命として、様々な変化をチャンスに変えることで成長を続けてきました。創業当時、世界恐慌やモータリゼーションという大きな社会・モビリティの変化があった中で、創業者の石橋正二郎は、日本のモータリゼーションを確信し、タイヤの国産化に挑戦しました。様々な技術的な困難を克服し、1931年3月1日に福岡県久留米市にて「ブリッヂストンタイヤ株式会社」が設立され、現在の当社につながっています。また、第二の創業と位置付ける1988年のファイアストン社買収は、当時の日本企業としての最大の買収案件であり、ファイアストン社の立て直しや同社との融合を経て、ブリヂストンはグローバルカンパニーとして進化することができました。このように、ブリヂストンは創立以来94年の歴史において変化をチャンスに変えることで、日本からアジア、そしてグローバルへと、人とモノの移動を支え続けてきました。
使命である「最高の品質で社会に貢献」についても、時代や社会の変化を踏まえて、その意味性を広げています。創業当初は、商品の品質を示していた「品質」を、サービスや経営・業務の品質にまで広げ、「社会」も創立の地である久留米から日本・アジアへ、さらにグローバルへと広げています。2020年を初年度とする第三の創業では、持続可能な社会への貢献も含まれています。今後のブリヂストンにおいても、「最高の品質で社会に貢献」は不変の使命として、全ての企業活動の起点であり続けます。
激動の事業環境にある第三の創業においても、この使命のもと、ビジョンである「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして、社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を掲げ、使命・ビジョンを具体化した企業コミットメント、「Bridgestone E8 Commitment(E8コミットメント)」をブリヂストンらしい価値創造の軸として、変革を加速しています。
持続的な価値創造へ向けた戦略の根幹
「変化をチャンス」に変え、持続的な価値創造を実現していくにあたっても、当社の戦略の根幹は変わりません。プレミアムタイヤ事業をコア事業として、成長事業であるソリューション事業との連動を深めることで、断トツ商品を中核にタイヤを「創って売る」から、お客様が「使う」段階で価値を増幅することを強化しています。
その戦略の軸は、以下のポイントです。
- 日本の強みを活かした新たなモノづくり・価値づくり会社へ変革すること
- お客様の困りごとを解決するソリューション事業の拡充を通じて、競争優位を構築すること→ 顧客経験価値の向上を通じて、顧客サクセスを導き出すこと
- これらの取り組みを日本モノづくりの現場力、匠の技といった強いリアルとデジタルの融合で支えること
「変化をチャンス」に変える中で、これらは軸となるべき活動であり、強化していかなければならないと考えています。さらに、タイヤを「創って売る」「使う」から、タイヤを原材料に「戻す」-リサイクルへと価値の循環にも挑戦しています。リサイクルは、探索事業の一部であり、コア事業、成長事業、探索事業の事業ポートフォリオにおける価値の循環も目指していきます。
また、事業環境が激しく変化する中で、グローバル経営リスク対応の重要性が年々高まっていると考えています。当社は、6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤)/TRWP(Tire and Road Wear Particles ― タイヤが安心・安全な移動を支えるために必要な路面と摩擦することによって発生する粉じんで、タイヤの表面であるトレッドと道路舗装材の混合物)、EUDR(欧州森林破壊防止規則)、サイバーリスク対応の3つを重点管理アイテムとして設定しています。これに加えて、都度生じる経営リスクを感度よく捉えるため、各地域事業のトップマネジメントから構成されるグローバル経営リスクコミッティを設置し、ブリヂストンの強みを活かした対応を推進することで、変化をチャンスへ変えていきます。
変化が常態化する中で「ブレない」経営を推進
2022年8月に発表した「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」は、これらの戦略を具体化し、変化が常態化する時代においてもブレない経営を推進する北極星として、2031年の創立100周年への道筋を示したものです。
断トツ商品の価値を増幅し、それに基づいて社会・パートナー・お客様との信頼も増幅していくこと、そしてお客様との信頼関係構築によってデータを共有頂き、データの価値も増幅することで、新たな価値を創造し、競争優位を獲得する戦略の実行を柱としています。また、クルマを支え、車両運行システムを支え続けることを目指すとともに、カーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーなどサステナビリティへも貢献することを中核に据えています。
「価値創造に、よりフォーカス」
このアスピレーションに事業環境変化を反映し、2024年から2026年までの3年間の具体的な実行計画として落とし込んだのが、中期事業計画 (2024–2026)(24MBP (Midterm Business Plan)、24年3月発表)です。社内外の様々な経営課題に対して、「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、「将来への布石を打つ」を経営の3軸に据えています。
その上で、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、「良い種まきを実施し、新たなビジネスを創る」というビジネス具体化シナリオに沿って、「価値創造に、よりフォーカス」する活動を推進しています。
持続的な価値創造基盤
4つのビジネス具体化シナリオの中において、最重要課題に位置付けたのは「良いビジネス体質を創る」です。激動の事業環境において、変化に対応し、持続的な価値創造を実現するためには、経営・業務品質の向上が必要です。ブリヂストンは、1960年代から品質経営活動として、「ブリヂストン独自のデミング・プラン」を推進しており、これをグローバルの全従業員、全階層において再強化しています。デミング・プランの基本思想である「良い品質の製品は、良い体質の会社から生まれる」と、基本動作である「PDCA」「なぜなぜ分析」「標準化」「データでものを言う」「重点管理を行う」を、ブリヂストンで働くにあたっての考え方・行動の「型」として、各職場において創造性・生産性の向上を追求しています。
さらには、当社の強みである断トツ商品や、生産・販売の現物現場において培われてきた匠の技などの強いリアルにデジタルを融合するデジタルトランスフォーメーション、タイヤ・ソリューション開発からビジネス領域までバリューチェーン全体における価値創造を支える知財戦略、人財投資を強化し付加価値を上げることや会社の成長と従業員一人ひとりの成長を両輪で実現することを目指す人的創造性向上など、ブリヂストンらしい価値創造の基盤となる取り組みを強化しています。
SX -サステナビリティトランスフォーメーション
ブリヂストン独自のサステナビリティ・ビジネスモデルの確立を進め、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」というバリューチェーン全体におけるカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブへの取り組みを、ビジネスと連動させながら強化していくことで、持続的な企業価値の向上とサステナビリティ価値創造の基盤を構築していきます。CO2排出量削減や、再生可能エネルギー比率向上、再生資源・再生可能資源比率向上についても、計画を上回るレベルで継続強化しています。
また、SX においては、ビジョンである「サステナブルなソリューションカンパニー」の実現を目指す経営戦略の一貫性や、経営戦略の実行による持続的な企業価値向上に向けた取り組み、サステナビリティにおける重要課題の特定、そしてそれを踏まえた情報開示などの取り組みも評価され、2024年に新設された「SX 銘柄2024」に選定され、引き続き2025年も選定を頂くことができました。激動の事業環境においては、これらの持続的な価値創造基盤をさらに強化し続けることが、重要であると考えています。
強いビジネス体質へ―稼ぐ力と資本効率の向上
価値創造基盤については、第三の創業のこれまでの変革の中で、まだまだではありますが一定の成果が出ていると考えています。一方で、企業価値に直結する稼ぐ力及び資本効率については、2021年以降、調整後営業利益率、ROIC、ROEといった重要経営指標の下降が続いており、経営として強い危機感を持っています。
2024年通期決算においては、中国EV 攻勢などによる自動車業界構造変化や、南米・欧州を中心に、廉価輸入品の増加など、タイヤ業界構造変化の加速が「新たな脅威」となる中、対前年増収増益となったものの、調整後営業利益率や最重要経営指標であるROIC、ROE において、対外発表にてコミットしたレベルは未達の結果となりました。
経常リソースのリーン化や、戦略投資や経費などのアロケーションも含めて、厳しい規律をもった経営をより強化し、もう一段の稼ぐ力と資本効率の向上、強いビジネス体質を構築する必要があると考えています。
2025年「緊急危機対策年」
このような状況下、2025年を「緊急危機対策年」と位置付けました。激動の事業環境の中、「守り」の活動を最優先に、「攻め」の活動を両輪で実行していくことで、将来の成長へ向けた道筋を切り拓いていきたいと考えます。
「守り」と「攻め」
「守り」では、経営・業務品質の向上を最優先課題として追求するとともに、2025年1月1日付にて新たなグローバル経営執行体制を構築しました。Global CEOの下に、4 名の副社長を配置し、BRIDGESTONE WEST、BRIDGESTONE EASTの事業責任(Profit & Loss(PL)責任)と、Global CTO(Chief Technology Officer)及び、Global CAO(Chief Administration Officer)・Global CSO(Chief Strategy Officer)によるグローバル最適を追求する横串・グローバル最適責任を明確にし、それぞれが対等の立場で各役割責任を果たすことで、管理・ガバナンスを強化、チェック& バランスを担保し、「実行と結果に拘る」経営を推進しています。加えて、当社初の取り組みとして、Global CTO 傘下にGlobal CIO(Chief Innovation Officer)を新設することで、新たな価値創造に向けたイノベーションの加速を図るとともに、WEST地域での断トツ商品開発などを強化するためWEST CTOを設置しました。Global CEO 及び副社長4名に、Global CIO、WEST CTOを加えた7名の執行役で、「緊急危機対策年」の経営を進めています。外国籍の執行役が2名、かつ、当社の経営において初めて技術バックグラウンドを持つメンバー3名を執行役に任命し、経営の規律を強めながら、多様性と今後の成長に向けた技術・イノベーションを重視する体制としています。
また、2020年の第三の創業直後から21年にかけて実施した事業再編・再構築(第1ステージ)に続き、事業再編・再構築(第2ステージ)を推進しています。特に、業績・事業環境ともに厳しい状況にある欧州事業については、2024年下期より具体化している生産、販売・小売、本社機能など「欧州事業の形を変える」再構築の検討、実行を加速させ、25年にこれをもう一段強化することで業績の改善を進めています。トラック・バス用タイヤ、リトレッド、小売に関しては、再構築による収益性改善がスタートするとともに、WEST 全体を含めた組織の統合・シンプル化を、業務プロセス改善をベースに推進しています。また、北米事業においても、2025年1月に発表した通り、トラック・バス用タイヤを生産する米国ラバーン工場の閉鎖や、本社機能、販売・オペレーション機能の人員削減など事業拠点とコストの最適化を進めています。24年の業績悪化の一端となった南米事業においても、各拠点の生産能力及び人員削減に着手し、「南米事業の形を変える」取り組みを推進しています。BRIDGESTONE EASTにおいても、組織のシンプル化、機能集約などを実行していきます。
「攻め」の活動については、断トツ商品を継続的に強化しており、乗用車用タイヤにおいては、「新たなプレミアム」と位置付ける商品設計基盤技術「ENLITEN」を搭載した新商品、鉱山車両用(OR)タイヤにおいては「Bridgestone MASTERCORE」の展開を拡大するとともに、次世代の断トツ商品の開発・企画も進めています。また、原材料の調達から、開発、生産、物流までモノづくりに関わる領域全体において、グローバルビジネスコストダウン活動を強化し、バリューチェーン全体におけるビジネスの質の向上を推進しています。この活動は、グローバル調達活動、SCM(サプライチェーンマネジメント)物流改革、BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)、グリーン&スマート化、現物現場での地道な生産性向上で構成され、2024年の厳しい事業環境においても業績を下支えしました。特にBCMAについては、開発・生産コストダウンを中心に着実に成果が出ており、現物現場で活動を進化させることで、2026年以降、業績貢献を加速度的に進めていく計画です。
「質を伴った成長」へ
創立100周年に向けては、稼ぐ力の強化を資本効率の向上と連動し、「質を伴った成長」を目指していきます。グローバルでリソースの投下などメリハリをしっかりとつけ、米国事業、インド消費財事業、鉱山・航空機系を中心とした生産財系BtoBソリューションを「成長市場」として位置付けました。特に、米国事業においては、米国の社会・経済に貢献し、人とモノの移動を支え続けるという想いのもと、強いビジネス基盤を持つ生産財(トラック・バス)系のタイヤ・ソリューション事業をさらに強化するとともに、消費財ビジネス再構築に注力し、成長に舵を切っています。消費財ビジネス再構築においては、ブランド、商品、チャネルとバリューチェーン全体で、ブリヂストンブランドとファイアストンブランドのそれぞれの強み、特徴を活かしたマルチブランド戦略を強化しています。これを支える断トツ商品強化のため、経験のあるエンジニアが、日本の技術センターから米国へ支援に行くなど、リソースのシフトも実行しています。
インド消費財事業においては、生産増強投資に加え、インド市場向け断トツ商品強化のため、サテライトテクノロジーセンターを設立し、技術開発にも投資をしています。加えて、ファミリーチャネルを中心とした販売チャネル強化を進めることで、1996年のインドでの生産・販売事業会社設立から築き上げたマーケットリーダーポジションをより強固なものにしていきます。生産財系BtoBソリューションは、鉱山・航空ソリューションを中心に、現物現場でお客様に寄り添い、困りごとを解決することで、「断トツ商品の価値の増幅」、「お客様との信頼の増幅」、「データの価値の増幅」を実現し、お客様との共創を含めて新たな社会価値・顧客価値を創造していきます。
また、新たなコーポレートブランディング活動として、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動も強化していきます。2026-2027シーズンからは、ABB FIA Formula E世界選手権の単独タイヤサプライヤーにも選定されています。2010年のFormula1® 撤退以来、15年ぶりにFIA 世界選手権に復帰し、グローバルモータースポーツを支える活動を再スタートさせます。「極限への挑戦」であるモータースポーツ活動を「走る実験室」として、そこで磨かれた技術を市販用タイヤに展開し、次世代のENLITEN 技術を進化させていきます。さらに、バリューチェーン全体のサステナブル化をモータースポーツタイヤからいち早く推進するとともに、イノベーションの加速や挑戦し続ける企業文化など、会社全体の変革を加速させていきます。加えて、自ら極限に挑戦する姿を示していくことで、「サステナブルなプレミアム」ブランドの構築を進めていきます。当社が目指すのは、全ての一人ひとりにとっての「最高」を支え続け、モビリティの未来になくてはならない存在となることです。
「変化をチャンスへ」
2025年は、このような「守り」と「攻め」をやり抜くことで、下期から「質を伴った成長」をスタートさせたいと考えています。しかしながら、激動の事業環境は続き、今年に入り、米国関税影響を起点とした「新たな経営課題」に直面しています。米国関税影響については、25年5月末時点で未だ不確定要素が大きい状態ですが、米国関税条件(一部当社想定織り込み)による原材料コスト増やタイヤ単体へのインパクト(米国輸入タイヤコスト増など)を直接的な影響として都度試算し、対策を推進しています。25年5月15日時点においては、直接的な影響を、調整後営業利益において約450億円と試算しており、これらを様々な施策の組み合わせで打ち返す前提です。当社における直接的影響は、例えば、乗用車用タイヤ本数においては日本生産品のうち、米国輸出は全体の約1割弱、また、グローバル販売において米国関税の影響を受ける本数は、メキシコ・カナダ品の関税適用が猶予されている前提で、約4%レベルです。
これらの事業環境下、「緊急危機対策年」の意味性はますます深まっています。グローバル全体で、変化をチャンスに変えることが必要です。「変化をチャンスへ」は、ブリヂストンの歴史を踏まえ、2020年の第三の創業以降も経営方針として私自身が常に意識していることです。グローバルの方向性においては、やるべきことは、これまでと変わりません。それらを、もう一段強化することで、さらに強いビジネス体質を構築するチャンスになると捉えています。「守り」と「攻め」の活動をやり抜き、さらに強化することに加え、再編・再構築(第2ステージ)における追加施策を含めたグローバルでの「リーン化」や、グローバルカンパニーの強みを活かしたグローバルサプライチェーンの最適化を推進していきます。
加えて、米国関税影響における緩和策を発端として、国別に市場・ビジネス構造変化への対策を徹底し、25年下期には、米国など、成長市場から「質を伴った成長」をスタートさせていきます。特に、当社の最重要市場である米国においては、消費財ビジネス再構築を中心に事業強化を、販売・生産の両面からさらに加速させていく必要があります。例えば、米国内の車両の車齢アップによるメンテナンス需要の増加や、Tier 2及びTier 4ゾーンのタイヤ需要の伸びが想定される環境においては、米国伝統のブランドであるファイアストンの価値がより重要となります。NTT INDYCAR® SERIESなどとの連携によるブランド力向上、ENLITEN 技術をファイアストンにも展開することで商品力を強化し、ユニークポジションを確立することに加えて、直営小売店網であるFirestone Complete Auto Care の拡大、サービス拡充を中心にした新ファミリーチャネルの構築など、ブランド、商品、チャネルを包括的に強化していきます。また、これらの取り組みを通じて、お客様に寄り添い、困りごとを解決することで顧客価値の創造をより強化することができると考えています。生産においては、ブリヂストンは従来から地産地消体制を推進することで、グローバルでレジリアントな基盤を強化してきました。現状、米国地産地消率は、乗用車用タイヤ(PS)約6割、トラック・バス用タイヤ(TB)及びOR 超大型では約7割となっており、北米・南米を合わせた米州では、PS 約9割、TB 約8割です。米国事業強化の一環として、これらを維持・向上するために、PSタイヤにおいて生産増強を計画しています。米国エイケン工場で工程間バランスを適正化する小規模投資を実行し、ウィルソン工場も含めて生産性向上と既存設備を最大活用することで、2025年より徐々に増産をスタートし、2027年には約2百万本の増産体制を構築していきます。メキシコ・カナダの生産拠点においても同様に、生産性向上・既存設備の最大活用による増産を推進していきます。
また、高付加価値タイヤ分野においては、日本で生産し、世界で勝つ戦略を実行し、モノづくりの中核である日本にて、グローバルの地産地消体制を補完します。その他の地域においても、国別の戦略を構築し、変化をチャンスへ変える取り組みを実行していきます。特に、日本、タイ、インドネシアなどの高シェア市場では、廉価品ゾーンの流入を予見しています。これらの市場では、ファミリーチャネル防衛を強化する必要があり、これまで継続してきたプレミアムフォーカスによるブリヂストンブランドのBEST 領域の「断トツ」強化に加え、Better、Good 領域も強化していきます。また、鉱山用タイヤビジネスは、高い米国地産地消率、グローバル販売における米国輸入品比率が低く、米国においても、レジリアントなビジネス基盤を構築しています。この基盤の上で、断トツ商品Bridgestone MASTERCOREと、ソリューションの拡充を継続し、「質を伴った成長」を続けていきます。
2025年に、やると決めたことをしっかりとやり抜き、感度鋭く「変化をチャンス」に変える対策を実施することで、2026年へは「真の次のステージ」へ進み、激動下でも勝ち抜く「強いブリヂストン」へ進化していきます。
ブリヂストンらしいステークホルダーへの貢献の考え方
いかなる経営環境下においても、ブリヂストンは、使命「最高の品質で社会に貢献」の下、E8コミットメントを価値創造の軸として、株主様、お客様、従業員・人財、パートナー & サプライヤー、地域社会、サステナブルな社会など、全てのステークホルダーへの貢献を最大化することを目指していきます。資本政策と株主還元強化については、「ブリヂストンらしさ」を軸に、次のステージへの取り組みを開始しました。財務健全性を維持しつつ、資本効率向上との両立を図るため、自己株式取得を実施するとともに、安定的かつ継続的な配当額向上を推進していきます。2025年の1株当たり配当額は、24年対比20円アップの230円を予想し、連結配当性向は、業界トップレベルの50%へ引き上げます。
従業員に向けては、グローバル経営KPIである人的創造性向上を基盤に、1人当たり人財投資額アップ、メリハリをつけた報酬アップを進めています。カーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブへの貢献も事業戦略と連動して引き続き強化していきます。また、地域社会へ向けては、地方自治体との共創に取り組み、探索事業であるパンクしない次世代タイヤ「AirFree」を、グリーンスローモビリティへ展開するなど、地域社会のモビリティを支え、社会課題を解決する活動を推進しています。加えて、創立100周年に向けては、その技術を月面タイヤにも活用するなど、人類の夢を背負った挑戦も進めています。
持続的な価値創造へ向けた共創への招待
2025年の統合報告においては、持続的な価値創造へ向けた活動や、「変化をチャンスへ」変える取り組みについて具体的にお伝えします。変革の道筋をクリアにお示しすることで、激動の事業環境下において、共に生き抜き、成長へ向けた新たな価値を創造するきっかけにできることを願っています。
石橋 秀一
株式会社ブリヂストン
取締役 代表執行役 Global CEO







