ガバナンス

事業継続(BCP)・危機管理

社会価値と顧客価値を提供するという使命を達成するため、従業員の安心・安全を確保し、事業を継続することは、ブリヂストンの最優先事項です。潜在的なリスクを感知、評価し、優先順位を付けて、リスクへの対応に努めることで、従業員の安心・安全を確保し、事業を継続し、お客様・地域・お取引先様などへの責任を果たしています。ブリヂストンでは、定期的に従業員向けの研修・訓練を実施すると共に、事業継続計画(BCP)と統制状況を継続的に見直し、改善しています。

事業継続及び危機管理体制の強化は、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)の重要な側面であり、自然災害、気候変動、地政学的対立などの課題に世界中が取り組む中、さらに関心が高まる分野です。ブリヂストンにおいても、こうした課題の解決に積極的に取り組んでいます。

目標とKPI

ブリヂストンは、リスクを予防し、低減するというERMのミッションを達成するため、事業継続・危機管理の目標・KPIとして以下を定め、継続的な取り組みを進めています。

  1. 1.グローバル及び各地域で、継続的に、事業継続や危機管理プログラムの開発と強化、及びこれらのプログラムをサポートするためのテクノロジーの活用を推進します。
  2. 2.ビジネスに不可欠な機能について、目標復旧時間(RTO)を最大許容停止時間にまで引き下げます。
  3. 3.データ損失の最大量を制限するために、目標復旧時点(RPO)を最小限に設定します。
  4. 4.事業影響度分析(BIAs)及び拠点対応計画の完了率を上げ、対応計画の検証・更新が確実に行われるようにします。
  5. 5.危機対応に要する時間を短縮するために、応答時間を改善します。
  6. 6.危機の発生から通常の事業活動に戻るまでの時間を短縮するために、危機解決に要する時間を削減します。

事業継続・危機管理プログラム

緊急事態の際の事業継続には、迅速な初動対応が重要です。ブリヂストンは、従業員の健康、安心・安全の確保、事業損失の最小化、サプライチェーンで起こりうる事業への影響予測を最優先事項として取り組んでいます。また、早期復旧を図るために、具体的な危機の状況や重大性・深刻性に応じた段階的な対応体制を構築し、各々の状況への対策や手順を明確にして実行する仕組みを整えています。これらにより、緊急事態が発生した場合に、迅速な初動対応と事業の継続・早期復旧を図ることを可能にしています。また、過去の経験や教訓を学びに活かし、継続的な改善を推進しています。

ブリヂストンでは、経営層が十分な情報に基づきタイムリーかつ広範な意思決定が行えるよう、リスク管理プロセスを継続的に改善していきます。また、各地域でオールハザード型BCPの策定に取り組んでいます。オールハザード型BCPは、特定のシナリオを想定した計画ではなく、あらゆる脅威や脆弱性に備えて、サプライチェーンの寸断や混乱を防止すべく組織機能ごとに計画を策定します。

ブリヂストンは、ERM、事業継続、及び危機管理のための共通かつ統一されたフレームワークと基準を開発しています。これらの基準は、プログラムのガバナンスと監督、及びグループが重要なリスクを特定、評価、低減、対応するためのプログラムやその枠組み、技術、能力について定めるものです。

また、EARなど、緊急事態における当社グループのグローバルな取り組みも強化しています。

ブリヂストンは、事業継続と危機管理の枠組み強化に引き続き取り組んでいきます。

  1. ※Emergency Action Report:ブリヂストンにおける緊急時の情報共有システムの名称

気候変動及び自然資本損失に関するリスク管理とTCFD・TNFDへの対応

ブリヂストンは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、さらに、2022年3月よりTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに参加しています。

気候変動及び自然資本損失への対応に世界的な関心が高まり、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き、並びに、昆明・モントリオール生物多様性枠組として採択されたネイチャーポジティブ※な世界の達成に向けた動きが加速する中で、ブリヂストンは、気候・自然資本への依存関係と影響、気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に評価・管理し、事業戦略への反映及び情報開示を進めています。 これらのリスク及び機会への認識を踏まえ、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進にフォーカスする取り組みとビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立を進めています。具体的には、バリューチェーン全体でのCO2排出量削減など、脱炭素社会への移行リスクの低減に取り組むと同時に、天然ゴム供給源多様化に向けたグアユール事業化への取り組みなど、適応策による物理リスクの低減についても取り組んでいます。

下記の表は、ブリヂストンの事業にまつわる気候変動及び自然資本関連の物理的リスク及び移行リスクを示しています。

気候変動に関するリスク
物理リスク 移行リスク
  • 台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の高まりによる事業活動中断のリスク
  • 降雨パターンの変化に伴う天然ゴムの収穫不良による原材料調達に関するリスク
  • 降雪量の減少により冬タイヤの需要が減少するリスク
  • 気候変動や自然資本損失のために制度・規制などの導入が進む際、社会や顧客の急速なニーズ変化に対して研究開発費を十分な事業成長に結びつけることができない場合における事業活動の制約やコストの上昇など、業績や財務状態に悪影響を及ぼすリスク(炭素税やCO2排出削減義務・排出量取引制度、タイヤの低燃費性能に関する制度・規制、使用済タイヤのリサイクルに関する制度・規制、取水に関する制度・規制、持続可能な天然ゴムに関する制度・規制など)
スクロール

TCFD及びTNFD推奨開示内容への対応状況については、こちらのページをご覧ください。

  1. ※自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性・自然資本の損失を止め、反転させることを意味しており、事業活動による生物多様性・自然資本への負荷を低減し、自然の恵みを維持し回復させ、自然資本を持続可能に利用する社会経済活動への変革が意図されています。

自然災害リスクへの備え

ブリヂストンは、自然災害に対して企業資産を積極的に保護することが企業経営の基本であると考えています。また、従業員や地域社会のリスクを低減し、社会的責任を果たすための取り組みも行っています。ブリヂストンでは、各地域で自然災害発生時や異常気象の際のBCPを策定し、定期的に初動対応訓練を実施しています。以下は、各地域が対象とする自然災害の一例です。

日本:地震(含む津波)、洪水・台風
アメリカ:ハリケーン
ヨーロッパ:猛暑
アジア:洪水

重度感染症対策の変遷

ブリヂストンは事業活動をグローバルに展開しており、様々なリスクにさらされています。感染症の世界的拡大(パンデミック)はその一つですが、これはCOVID-19の感染拡大に限りません。ブリヂストンでは、2013年から、パンデミックの恐れのある各種の重度感染症の蔓延に対してBCPを策定しています。

当社のBCPによって、2013年の中国での鳥インフルエンザ流行時には適切な対応を行い、現地の従業員の健康や事業の安定を保つことができました。2014年と2015年には、リベリアでの天然ゴム製造事業所において、エボラ出血熱の蔓延を阻止する取り組みを実施しました。具体的には、ファイアストン・ナチュラルラバー・カンパニーが、人命の救助、周辺地域の教育などの対応活動支援、リベリア政府やNGOとの協力のもとでの病気の発見・治療について、事業を休止することなく行いました。この活動は、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のケーススタディとして取り上げられ、現在、MBAの学生向けの危機管理の通常カリキュラムに組み込まれています。

COVID-19の感染拡大への対応

COVID-19の感染拡大が事業に影響を及ぼし始めた2020年には、従業員の安心・安全を最優先に、感染に伴う様々な変化に対して迅速な意思決定を行うべく、危機管理会議を立上げ、Global CEO、Joint Global COO及び主要な経営チームメンバーが毎日情報を共有し、世界中の拠点が直面した課題に対して、迅速かつ一貫性のある対応ができる体制を構築しました。

さらに、COVID-19の感染拡大時には、ブリヂストンは事業継続計画リスクマネジメントワーキンググループ(BCRM WG)主導のもと、グローバルで統一の危機管理及び事業継続アプローチで対応を行い、対応の一貫性を確保し、今後のリスクと課題を予測して備え、グループ全体でベストプラクティスを共有しました。WGの具体的な取り組みとして、SBUが重要な個人用保護具を利用できるようにすること、動向や事業への影響を把握するための共通の症例追跡・報告手順の導入、出張や会議、イベントに関するグローバルポリシーの策定、コンプライアンス徹底のための規制関連の情報モニタリング、東南アジアの休日や米国の社会不安などの複合的な事象による影響を評価し、各SBUの経営執行会議に対し週次での最新情報の提供を行いました。

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