ミッション
- 持続可能な調達活動を通じ
社会価値を創造する -
私たちは、長期的に環境、社会、経済をよりよくしていくため、次に掲げる4項目をサプライチェーン全体に浸透させていくことで、持続可能な社会と価値創造の実現に向け、誠実に取り組みます。
- 1. 透明性
- 2. コンプライアンス
- 3. QCD(品質、コスト、供給)& イノベーション
- 4. 持続可能な調達活動
グローバルサステナブル調達ポリシー
ブリヂストンの持続可能なサプライチェーンの実現に向けた活動は、ステークホルダーに環境面、社会面、経済面の長期的な利益をもたらします。この活動は、「グローバルサステナブル調達ポリシー(以下、調達ポリシー)」に基づいており、2050年を見据えた環境長期目標に掲げる「100%サステナブルマテリアル化※」に沿ったものです。調達ポリシーは、適正な調達先選定要件の明確化やベストプラクティスの促進、また、業界内におけるコミュニケーション促進や業務改善のツールとしても活用されています。
天然ゴムのサプライチェーンや、人権及び環境への配慮を含む持続可能な調達に対して、ブリヂストンのお客様や消費者の皆様の関心がますます高まる中、調達活動を通じた持続可能な社会と価値創造の実現というミッションは、一層重要になっています。調達ポリシーの策定に当たっては、国連の「世界人権宣言」や「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の各種条約、ISO26000(社会的責任に関する手引)ISO20400(持続可能な調達に関する手引)など、広く社会に認められている人権の国際規範及び基本原則に細心の注意を払って作成しました。
調達ポリシーでは、児童労働、強制労働、土地の権利、労働条件、公平で平等な処遇を事業における5つの重要な人権課題として定め、今後ステークホルダーとの対話を通じてこれらの課題の原因を特定していくことを約束しています。調達ポリシーをもとに、長期的に環境、社会、経済をより良くするためにも、お取引先様と協力して持続可能なサプライチェーンの早期実現に貢献していきます。
※ ブリヂストンでは、「1.継続的に利用可能な資源から得られ、2.事業として長期的に成立し、3.原材料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料」をサステナブルマテリアルと位置付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。
調達ポリシーの改訂
ブリヂストンは、外的環境の変化、社会やステークホルダーからの期待や要請を踏まえ、調達ポリシーを改訂しています。
第3版(2024年1月改訂)では、サプライチェーン全体に調達ポリシーを周知することを目的として、Tier1のお取引先様に対し、調達ポリシーの適用範囲を自身のサプライヤーにも拡張し、内容を共有していただくことを明記しています。さらに、環境・人権問題などの社会的要求事項にも対応できるよう、調達ポリシーの内容を拡充しました。
ブリヂストンは、お取引先様が調達ポリシーを十分にご理解の上、ご対応いただくようご協力をお願いしています。また、持続可能な調達活動を推進し、社会の要請に応えていく中で、継続的な改善を図り、将来的にお取引先様とより良いビジネスパートナーシップを構築していくことを目指しています。
ポリシー策定・改訂のプロセス
焦点を当てている項目
調達ポリシーは、下記の4項目に焦点を当てており、ブリヂストンとお取引いただく際に必ず実施いただきたい事項と、持続可能なサプライチェーンの早期実現のために実施をお願いしたい事項を定めています。
- 透明性 ― 調達に関わるトレーサビリティの向上と、優れたガバナンス体制の構築を含めて定めています。
- コンプライアンス ― ブリヂストンが事業を展開する国及び地域で適用される全ての法律と規制を遵守すべきことを定めています。
- QCD(品質、コスト、供給)&イノベーション ― 高品質の製品とサービスをタイムリーかつ適切な価格で供給するとともに、国際社会の発展に寄与する革新的なテクノロジーを追求すべきことを定めています。
- 持続可能な調達活動 ― 環境関連法令の遵守など環境への責任ある調達活動、差別のない最低賃金の遵守や強制労働防止、結社の自由と団体交渉などの人権の尊重、安全で健全な働きやすい労働条件、水利用、土地の利用及び保全、防災、レジリエンス(変化に対処する能力)に関する事項に取り組むことを定めています。
推進体制
ブリヂストンの「サステナブル調達ワーキンググループ」は、調達やサステナビリティ担当の経営層など、世界各地のブリヂストン従業員から組織横断的に構成され、調達ポリシーや関連施策を策定・展開する上で中心的な役割を果たしてきました。持続可能な調達活動の推進と施策実施面をさらに強化するため、2024年以降は、議論の場を「サステナブル調達ワーキンググループ」から戦略的事業ユニット(SBU)の調達責任者で構成される「グローバル調達コミッティ」へと移しており、関連するテーマについての議論は、テーマ別のタスクフォースにおいても実施されています。また、グローバル調達コミッティは、グローバルで進める取り組みや活動の進捗状況を確認し、グローバル経営執行会議(Global EXCO※)に報告しています。
※ Global CEOを含むメンバーから成り、グループの事業戦略と執行を監督する最高位の会議体
「グローバルサステナブル調達ポリシー」の実行
調達ポリシーの導入以降、ブリヂストン全体で教育を実施し、中でも調達、法務、技術、顧客対応業務に関わる多くの従業員に対する教育活動を積極的に行ってきました。
ブリヂストンは、購買の量と頻度によってお取引先様を以下の3つのレベルに分類し、取り組みを推進しています。レベル1のお取引先様の多くは、タイヤ製品の原材料を取り扱うお取引先様で、主な原材料は天然ゴム、合成ゴム、スチールコード、ゴム薬品などです。国内外のお取引先様と共に、持続可能な調達に向けた活動を進めています。
- ※1「調達ポリシー」における「必ず実施いただきたい事項」及び「実施をお願いしたい事項」への対応状況。
- ※2原料や製品がどこから調達され、どのように生産され、誰が関わっているか、また、これらの原料や製品の調達が、サプライチェーンに関わる全ての人に与える影響を明確に知り、確認するための能力。
調達ポリシーの展開
お取引先様と共に調達ポリシーをサプライチェーン全体に浸透させていくことを目標に、 ブリヂストンのレベル1及び2の全てのお取引先様に受領確認をお願いしています。2018年の初版においては、99%を超えるレベル1及び2のお取引先様に調達ポリシーを受領いただいたことを確認しています。第3版を2024年1月に改訂・発行し、レベル1及び2の全てのお取引先様からの受領確認を目標にしています。(2025年3月末時点では、74%のレベル1及び2のお取引先様から調達ポリシーの受領書をいただいています。)
ブリヂストンは、数年にわたり、お取引先様に調達ポリシーなどのブリヂストンの活動を十分にご理解いただくため、事業活動を行う様々な地域で「調達方針説明会」を毎年開催してきました。説明会では、調達ポリシーで焦点を当てている、透明性、コンプライアンス、QCD &イノベーション、そして環境への配慮や人権の尊重といった持続可能な調達活動に関する4項目についてお取引先様にご説明しています。2024年は、各地域合計約340社のお取引先様を招待いたしました。
お取引先様への調達ポリシーの展開活動は、サステナビリティに関する国際的な調査・評価機関であるEcoVadisにより、「持続可能な調達」分野で80点という評価を得ました(2024年時点、全体では72点)。
EcoVadisによるアセスメント
ブリヂストンは、EcoVadisによるアセスメントを通じて、人権課題への取り組みをはじめ、お取引先様のサステナビリティへの取り組みを評価しています。同社のアセスメント結果をモニタリングし、定期的に社内に共有しています。調達ポリシーに基づき、お取引先様と共に持続可能な調達活動と競争力の向上に取り組んでいます。
新規及び既存のレベル1、2のお取引先様(約1,000社)に対しては、EcoVadisによる、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する詳細なアセスメントを実施しています。エネルギー消費、水、生物多様性、汚染、廃棄物、お客様の安全、労働安全、労働慣行、人権、汚職、贈収賄、不正行為、マネーロンダリング、持続可能な調達などに関するESG課題について、調達ポリシーに照らして評価しています。
ブリヂストンは、EcoVadisのアセスメントに関して以下のような目標とKPIを設定しています。
-
1.Tier1のタイヤ原材料のお取引先様との取引金額ベースにして95%以上がEcoVadisのESGに関する詳細なリスクアセスメントを受審。
(2025年3月末時点では、98%が受審しています。) -
2.すべてのTier1の天然ゴムのお取引先様がEcoVadisのESGに関する詳細なリスクアセスメントを受審。
(2025年3月末時点では、100%が受審しています。)
2025年3月末時点で、タイヤ原材料のお取引先様のうち76%にEcoVadisによるアセスメントを受けていただきました。そのうちの86%が、ブリヂストンが定める持続可能な調達活動の基準である、総合平均45点以上のスコアを満たしています。また、44点以下のお取引先様は、フォローアップや再受審を経て、14%に減少しています。
お取引先様の改善支援と監査
ブリヂストンでは、前述の通り第三者機関の評価を用いて、お取引先様の環境・社会パフォーマンス・ガバナンスを数値化し、お取引先様に必要な解決策の助言や支援を行い、改善を促します。
調達ポリシーの内容とアセスメントの結果に基づき、お取引先様のESG活動の改善に向けた支援として、各地域において持続可能な調達のためのセミナーやワークショップを実施しています。2024年は下記の通り実施しました。
- カーボンニュートラルに関するワークショップ/セミナー(欧州、米国、日本、アジア)
- EcoVadisのスコア改善のための個別支援(中国)
今後もお取引先様とのさらなる対話を通して、持続可能な調達活動に努めてまいります。
天然ゴムの持続可能な調達
グローバル化により、 世界中から原材料等の調達が可能となり、また地理的距離によらず、 企業間の協働も可能となりました。一方で、企業は、事業を展開するあらゆる地域で、人権問題や気候変動などのサステナビリティに関する問題に影響を与えるリスク、またこれらの問題から影響を受けるリスクの両方に直面しています。近年の不安定な地政学的状況やカーボンニュートラル化に向けたグローバル規模での流れを受けて、企業は自社の事業活動だけでなく、バリューチェーン全体において、人権の尊重や森林破壊の防止といったサステナビリティ関連リスクに対処するためにお取引先様とも協力することが急務となっています。
ブリヂストンでは、社会やビジネスへの影響を踏まえ、特に、天然ゴムの持続可能な調達に注力しています。天然ゴムはタイヤの製造に使われる主要原料であり、高品質のタイヤを生産するために不可欠な再生可能資源です。また、天然ゴムの栽培には、世界中で600万人以上が関わっているとも言われ、多くの人々の生計を支えています。しかし、天然ゴム需要が増加し続ける中、世界的な森林破壊の懸念が広がっており、天然ゴムのサステナビリティ向上に向けた取り組みは、事業を継続していくための重要な経営課題となっています。ブリヂストンは 、事業の持続可能性向上と、天然ゴムのトレーサビリティ向上の両面で、 自社農園を保有していることが強みにつながっていると考えます。 天然ゴムのサステナビリティに関する機会創出やリスクマネジメントの知見を得る実験室としての自社農園を保有することで、現物現場の深い理解に基づいて、信頼できるパートナーとのエンゲージメントを高め、緊密な協力関係を築いています。
上流トレーサビリティを強化し、透明性の高い天然ゴムサプライチェーンを構築
トレーサビリティの確保は、ブリヂストンのサステナブル調達活動の中核を成しており、トレーサビリティを確保することで、当社が事業で使用する原材料がどこからやってきたか、誰がどのようにして生産したかを可視化することができ、調達に関連するリスクを軽減することができます。ブリヂストンでは、2027年までにトレーサビリティを地区(ディストリクト)レベル※で100%確保することを目指しています。目標の実現に向けて、従来のデータ収集方法の限界を認識した上で、デジタルツールの導入を拡大しています。デジタル化により、土地利用分析のための衛星画像、管轄監視のための地理マッピングの利用に加え、データをリアルタイムで管理するためのクラウドベースのデータ保管が可能となり、トレーサビリティのデータの精度と信頼性が向上しています。
さらなる取り組みとして、農園までのトレーサビリティの確保にも取り組んでいます。お取引先様の自己申告に基づく調査によると、2024年末時点で、規制遵守が求められる欧州市場向けだけでなく、グローバルな天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティを約42%(農園まで)確保しました。
- ※1目標
- ※2GPSNR定義の区分(2024年のデータはお取引先様から貰った情報をもとにブリヂストンで算出)
- ※3農園のジオロケーションあるいは境界マッピング情報ベース
EUの森林破壊防止規則(EUDR)への準拠に向け、欧州向けまたは欧州域内で製造される製品について、 期限内にEUDR 要件に準拠してリスクを特定し、デューデリジェンスプロセスを確実に実施できるよう、継続的に取り組んでいます。
※区分についてはこちらを参照ください。
Geographical Classification - Global Platform for Sustainable Natural RubberEUDR要件の準拠に向けたトレーサビリティ向上の取り組み
EUDRワークショップ
欧州森林破壊防止規制(EUDR) 要件の準拠に向けた取り組みの一環として、 天然ゴムサプライチェーンの包括的な現地視察及びトレーサビリティ向上施策を実施しています。
既存のトレーサビリティ確保の枠組みを活用して、天然ゴムの小規模農家とのエンゲージメントを大幅に拡充しました。 また、上流トレーサビリティの強化とEUDR 要件の準拠に向けて、 お取引先様とのパートナーシップを軸に協働して活動を推進しています。信頼できるパートナーとの強い協力関係のもと、 上流の天然ゴム農園の詳細なリスク評価を実施し、 農園の境界のマッピングを実施しています。このような取り組みに加え、厳密な検証活動や広範囲に渡る書類監査、 そしてモニタリングを強化することで、お取引先様のデューディリジェンス活動が拡充され、透明性とコンプライアンス対応が大幅に強化されています。
具体的には、 複数回の現地視察に加え、 確実な書類検証や方針・手順の監査といった信頼度の高い検証手段を組み合わせています。こうした手法により、お取引先様のデューディリジェンス能力が向上し、事業活動と規制・法令への確実な対応の両立が可能となっています。
2024年に実施した農園レベルのリスク検証に続き、現在は特定されたリスクに対処するためのフォローアップ措置の 策定に取り組んでいます。この一環として、2025年にはお取引先様と共にリスク軽減計画を策定する予定です。さらに、EUDR 要件の準拠に関する研修の提供や、 活動の進捗を追跡するモニタリングシステムの確立にも取り組みます。 このように積極的に関与することで、農園レベルでの責任ある調達 活動の推進や、 EUDR 基準に沿った継続的な改善を支援して いきます。2024年には、天然ゴム加工施設とその上流サプライチェーンの視察を実施し、ベストプラクティスと潜在的なコンプライアンスリスクの双方を特定しました。 視察後には各お取引先様に合わせたリスク軽減計画を策定し、特定された課題が効果的な形で解決されるよう、引き続き注視していきます。
天然ゴムサプライチェーンにおけるデューデリジェンス活動を通じた持続可能性の向上
2021年には、社外のステークホルダーの皆様からESGリスク管理の要求が高い天然ゴムのサプライチェーンに着目し、ESGのデューディリジェンス活動を推進しています。天然ゴムのサプライチェーンにおけるESGリスクを特定・評価するために、Verisk Maplecroft及びEcoVadisと協働しています。さらに、Verisk MaplecroftとEcoVadisの第三者アセスメント結果に基づき、対象となるお取引先様を選定し、両社がWWFジャパンと連携して開発した自己評価アンケート、SAQ(Self-Assessment Questionnaire)を使ってESG現地監査を実施しています。2022年から2023年にかけては、合計54のTier1天然ゴム加工工場でESG現地監査を実施しました。2022年から2024年に実施した監査において人権侵害や重大な環境影響は確認されていません。
ブリヂストンでは、2024年も引き続きWWFジャパンと協働し、ブリヂストンに天然ゴムを供給するTier1のお取引先様のESG監査を実施しました。2024年も、人権侵害や重大な環境影響は確認されていないものの、更なる体制強化に向けて、今後も監査の取り組みを継続していきます。
EU森林破壊防止規則への対応
ブリヂストンは、EUの森林破壊防止規則(EUDR)の要件に適時かつ迅速に対応するための体制をグループ全体で整えており、対応準備を進めています。また、GPSNRやETRMAなどの業界団体と積極的に連携して、規制内容に対する業界共通の見解を取りまとめるとともに、生産を支える小規模農家を支援しています。
2024年は、主にEUDRの要件遵守に注力した取り組みを行いました。EUDRでは、天然ゴムを含む主要品目の生産・取引に伴う森林破壊リスクへの対応策として、デューディリジェンスを強化することが義務付けられています。
ESG視察は、ブリヂストンの長期サステナビリティ戦略にとって引き続き重要であることから、ESG現地視察の手順にEUDR 特有のモジュールを組み込み、継続して手順を強化しています。新たに改訂された手順には、過去のアセスメントから学んだ教訓も取り入れられているため、より包括的な環境リスク、社会リスクの評価が可能となっています。取り組み方法を改善することで、規制要件への対応能力を強化すると共に、サプライチェーン全体の透明性を高め、持続可能性を向上しています。今後の目標は、2025年中に全てのTier 1の天然ゴムのお取引先様を対象にESG 現地視察を完了することです。 これは、サプライチェーン全体ESGリスクを完全に評価し、特定されたリスクに対応すると共に、責任ある調達活動と規制遵守を強化するという私たちブリヂストンのコミットメントでもあります。
生産性向上支援の強化
世界の天然ゴム需要が上昇傾向を辿っている中で、森林保護の観点から法規制などが進められており、生産量を増加するために農園を拡大することは難しくなっています。天然ゴムは、タイヤ製造に用いる重要な再生可能材料です。しかし、収穫量が少なければ、小規模農家は天然ゴムの栽培で生計を立てることができず、他の作物栽培に切り替える可能性があります。そのため、天然ゴムの小規模農家の生産能力を強化し、収穫量と収入を上げ、小規模農家が森林破壊や他のESGリスクの原因にならないようにすることが、ブリヂストンにとって重要な活動になります。
そこで、小規模農家の生産能力向上を目的とした支援を強化していくために、関連機能で構成した「キャパシティビルディングタスクフォース」を2022年に設立しました。2024年には、小規模農家向けに研修と技術サポートを行い、11,687の農家を支援しています。また、タスクフォースでの議論を踏まえて、2026年までに12,000軒の小規模農家支援を行うことをグローバル戦略の中期目標として設定し、森林保全に向けて支援活動を強化しています。この目標は、「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)」の基準にも沿った内容となっています。
世界の多くの天然ゴムは、南米と東南アジアの熱帯雨林に生育するHevea brasiliensis(パラゴムノキ)から採取されています。森林の破壊リスクを回避するため、ブリヂストンは、パラゴムノキの苗木を小規模農家の方々へ配付するとともに、自社農園向けに開発した生産性向上技術の研修も行っています。
自社内製拠点の情報
準拠対策支援
ブリヂストンは、リベリア、インドネシア、タイに4つの天然ゴム内製事業所を保有しています。これらの自社農園・加工施設は、天然ゴムビジネスの持続可能性確保に向けた技術やノウハウの検証を行う試験現場として重要な役割を担っています。内製事業所で得られたノウハウや技術は、地域社会への技術支援の基盤として活用されると共に、ブリヂストンとパートナー企業の天然ゴムビジネスにおいて持続的な価値創出に貢献しています。生産性向上を目指した支援では、栽植法、未成木の管理、肥料の使用、病害対策、採取方法に加え、火災防止についても取り上げています。
例えばインドネシアにあるブリヂストンの内製事業所では、周辺のゴム農家に対し、天然ゴムの質の向上に向けたラテックスの取り扱いに関する指導を行っています。これまで培ってきたノウハウを共有することで小規模農家とWin-Winの関係を築くことができ、長期的な視点では、高品質な天然ゴムの持続可能な調達にもつながります。
一方、自社農園は、ブリヂストンが毎年世界各地で調達する天然ゴムの約20%を供給する、重要な原材料サプライチェーンの一角でもあります。だからこそ、EUDR 要件の準拠に向けた透明性の確保やその他の取り組みは、自社の天然ゴム施設にとっても重要なタスクです。例えば、 タイの加工施設は、積極的に農園のマッピング活動を実施しており、ワークショップの開催などを通じて上流サプライチェーンのパートナーとのエンゲージメントやコミュニケーションを強化しています。
また、インドネシアにある2つの内製事業所のうち、1つでは既に農園レベルで100%トレーサビリティを達成しており、もう1つの農園でも地区 (ディストリクト) レベルでの100%トレーサビリティを確保しています。
地域社会への貢献の一環として、リベリア及びインドネシアで幼稚園・学校、医療施設を運営しているほか、インドネシアでは公衆衛生に関する教育や水害救助、防災訓練など、安全衛生や環境に関する支援も実施しています。
自社天然ゴム農園における社会貢献
ブリヂストンでは、自社農園周辺の地域社会や小規模農家は重要なステークホルダーであるとともに、相互に依存するエコシステムの一部であると考えています。地元のゴム農家や小規模農家を尊重することは、環境を保護し、事業活動を行う地域社会にとっての価値を創造する上で、重要です。この姿勢は、ブリヂストンが依拠する地域社会、そしてそこに住む人々の保護につながっています。ブリヂストンは、2005年から、インドネシアとリベリアで計600万本以上の苗木を小規模農家へ配付し、世界では総額約2.7百万USドルに相当する苗木を寄付しています。さらに、ブリヂストンでは、ゲノムデータを利用して育種技術や栽培方法を改良し、パラゴムノキの病害耐性や生産性の向上に貢献しています。
リベリアにあるブリヂストンの自社農園では、安全かつ清潔な水や無償の医療サービスを提供し、また幼稚園から高校まで18の学校を運営し、235人以上の教職員が従事しています。また、照明や電力を持続的に供給できるように、40の地域に再生可能エネルギーを導入しています。
特に、東南アジアでは、小規模農家向けの播種成功率向上ワークショップを主催して、自社農園で開発した生産性向上のための技術支援をしており、毎年、数百の小規模農家が高品質のパラゴムノキの栽培や移植、病害の防除や最適な採取方法のワークショップに参加しています。
2012年から2020年にかけて、ブリヂストンは、早稲田大学と共にインドネシアで「住民参加ゴムノキ植林活動」を実施しました。この活動は、ブリヂストンと早稲田大学による連携研究プロジェクト「W-BRIDGE(Waseda-Bridgestone Initiative for Development of Global Environment)の一環として、早稲田大学が国際緑化推進センター(JIFPRO)と共に主導したものです。この8年に及ぶプロジェクトのスキームを使って、ブリヂストンは、2023年から新規事業として森林再生活動を再開しました。現地の大学、政府、JIFPROそして地域コミュニティといった多くの関係者が毎年この活動に参加し、荒れ地20ヘクタールへの植林を目標に活動を行っています。この活動は森林再生につながるだけでなく、農場管理に関する研修や収穫量の拡大に向けた技術指導の提供などを通して、小規模農家の生計向上に貢献しています。
ブリヂストンは、生産能力の向上に向け、2023年から2024年にかけて60軒の小規模農家を継続して支援しました。
1.エクステンション・オフィサーによる小規模農家を対象としたエンゲージメント活動(リベリア)

トレーサビリティを確保した透明性の高いバリューチェーンを確立するため、ファイアストン・リベリアでは農業エクステンション・チーム(農業技術指導チーム)を採用・配置し、小規模農家との直接交流を推進しています。本チームは農業のベストプラクティスに関する研修を実施するほか、人権、労働者の権利、環境基準に関する検証監査も行っています。個々の農家、生産及び調達に関するデータは、GPS情報も含めデジタルで収集されています。各チームは、配置前に生産性及びサステナビリティ基準に焦点を合わせた実践的ワークショップを基本とする広範な研修を受講しています。現在、24人のエクステンション・オフィサー(技術指導担当)が7つの地域に配置され、5,000人の小規模農家を担当しています。2025年末までに農家を「EUDR要件に沿ったサステナブルな農業を実施している農家」として認定することが目標です。
2.ゴム農家向けアプリ開発
ゴム農家に関連するデータの収集と、農業の生産工程管理に関するGood Agricultural Practice(GAP)及び衛生管理に関するGood Hygiene Practice(GHP)についての情報共有を目的とするアプリを開発しました。このアプリは、ゴム農家に向けて農園の優良事例に関する知識を広める用途で活用されており、2026年までにユーザー数5万人を目指しています。
3.実証用農地区画の設置

2023年に10区画設置した実証用農地では、デモンストレーションを通して農家の知識と能力を育成することで、行動を改善し収穫量を上げていくことを目指しています。デモンストレーションを通じて、見たり聞いたりするだけの学習よりもさらに学習意欲が高まります。
4.ゴム農家向け啓発プログラム
ゴム生産者協会(RPS)において、ゴム農家向けの意識啓発を図るプログラムを実施しました。
この意識啓発プログラムは、GAPの導入、品質向上、研修モジュールなどをテーマとするもので、37のRPSが対象となり、1,500以上の農家が参加しました。
トピック:Firestone Liberiaでのゴムの持続可能性プログラム(リベリア・マージビ郡とボン郡)
リベリアでの取り組みには、Firestone Liberiaの施設に近接するマージビ郡とボン郡から546の農家が参加し、持続可能な最良事例、データ取得による農場登録、品質仕様を満たす適切な作物の取り扱いなどに焦点を当てながら意見交換が行われました。
パートナーとの生産性向上支援プロジェクト
WWFジャパンとの連携による持続可能な天然ゴムプロジェクト
ブリヂストンは、2024年、WWFジャパンと連携し、インドネシアのリアウ州とジャンビ州で天然ゴムを栽培する小規模農家に対して、 収穫量向上に向けた技術を普及させるためのプロジェクトを開始しました。本プロジェクトの対象となっている両州は、天然ゴムからアブラヤシ栽培への転換が特に顕著な地域です。生産性向上を通して小規模農家の生計改善に貢献することで、こういった作目転換を防ぎ、新たな農地開発による森林破壊を阻止することを目指します。2024年を通して約4週間をかけて合計で4回実施した研修では、インドネシアにある自社の天然ゴム農園(ピーティー・ブリヂストン・スマトラ・ラバー・エステート)及び本社の技術センターから専門性を持つ人財が活動に参加し、インドネシア・リアウ州の農民組合Kuantan Singingi Rubber Farmers Association(APKARKUSI)に加入する小規模農家11軒と、ジャンビ州の小規模農家5軒に対し、採取技術と天然ゴムラテックスを凝固させたカップランプによる採取方法の向上、また、必要な知識の習得を支援しました。この取り組みのインパクトをさらに拡大するため、2025年には、「Farmer to farmer(農家から農家へ)」と名付けた研修プログラムを開始しました。本プログラムでは、2024年に研修を受けた小規模農家がインストラクターとなり、地元の農家と開発した標準化された収穫量増加ガイドラインを使って周辺の小規模農家に技術研修を行っています。また、小規模農家の収入源の多様化を支援するため、天然ゴムの植え直しの間に他の作物を間作するアグロフォレストリーも導入する予定です。
本プロジェクトの成果をネイチャーポジティブな視点から科学的に測定するため、WWFジャパン及びデロイトトーマツグループと協力して、SBTNの土地開示トライアルを通してKPI及び目標の設定を試みました。本トライアルの報告書はウェブサイト上でご確認いただけます。
Advisor of APKARKUSI
リアウ州の農民組合Kuantan Singingi Rubber Farmers Association
私たちの組合に所属する農家のほとんどは、慣行農法を行っており、若木の手入れ、ラテックス採取、カップランプの凝固と採取、病害対策といった天然ゴムを生産するための適切な技術を学ぶ機会は、これまでにありませんでした。
こうした技術習得研修の場を提供してくれたブリヂストンとWWFには、本当に感謝しています。
研修を受講すれば、天然ゴム生産の農業生産工程管理(GAP)について学ぶことができます。
天然ゴム生産の存続・発展に向けて、今後も包括的なフォローアップ研修が定期的に実施される予定で、最終的にはゴム農家の収入と暮らしの向上、そしてクアンタンシンギンギ県における持続可能な天然ゴム生産の拡大につながることを期待しています。
WWFインドネシア 天然ゴムフィールドコーディネーター
2024年に実施された持続可能な天然ゴム農家のための研修は、農家の人々に大変ポジティブなインパクトをもたらしました。研修のおかげで、生産性を上げる方法に加え、適切な採取技術やカップランプによる採取方法を使うことで、原材料としての天然ゴムの品質を向上させる方法など、農家の生計改善に直接結びつく知識を得ることができます。また、農家のサステナビリティに関する理解を深めることも、本プロジェクトの目的でした。2025年には、より多くの農家を対象に研修を行う予定ですので、ブリヂストンとのこのプロジェクトのインパクトは、さらに拡大するでしょう。私たちの取り組みは、自然や人に害を及ぼすことのない、持続可能な天然ゴム生産を実現する後押しとなると確信しています。
ブリヂストン サステナブル技術戦略・研究部 農園・バイオ技術研究課
内島 和人
ブリヂストン サステナブル技術戦略・研究部 農園・バイオ技術研究課 研究主幹
近藤 肇
インドネシアの内製農園に赴任していた際の経験や、他の天然ゴム生産国から入手した農園技術を基に、各農家の状況に応じた生産性・品質向上の指導を開始しました。参加者の皆さんは非常に熱心に取り組んでおり、私たちも参加者の熱意に応えられるよう様々な工夫をしながら引き続き指導を行ってまいります。こうした指導の結果がさらに拡大していくことを目指し、各農家の事情に応じた指導方法の標準化、仕組みづくりも計画しています。生産性向上による供給安定と、農家の方々の生活水準の向上の両立を目指し、引き続き鋭意取り組んでまいります。
GPSNRとのプロジェクト
GPSNRは、多様なステークホルダーが参加する包括的なネットワークであり、天然ゴム業界の持続可能性の強化に向けて、ブリヂストンが他タイヤメーカー、自動車メーカー、加工・製造業者、小規模農家、NGOと協働するうえで有効なプラットフォームとして機能しており、資源や知識を共有しながら、非常に幅広く複雑な問題に取り組んでいます。
ブリヂストンは、小規模農家の生産能力と持続可能性を強化するために、2023年にGPSNRが中心となって実施する取り組みの支援としてGPSNRに6万ドル(約790万円)を寄付しており、GPSNRから重要な支援企業として認められています。GPSNRでは、この寄付金を活用してアグロフォレストリーによる収入源の多様化のプロジェクトの取りまとめを推進しており、2023年から2024年5月の期間において、インドネシア、リベリア、コートジボワールでアグロフォレストリーのワークショップや研修を実施し、計99の小規模農家に支援を行っています。
ブリヂストンは、GPSNRの生産能力強化プロジェクトへの寄付に加え、有効な支援を実現するためにGPSNRの「小規模農家ワーキンググループ」に積極的に参加し、小規模農家の意見をGPSNRの活動に反映させるべく取り組んでいます。小規模農家の作付面積あたりの収穫量を増やすことで、生産能力を強化するための支援を行うために、GPSNRの「責任共有フレームワーク」での議論に主体的に参加し、資源や知識を共有するための最も公平な資金分配メカニズムのあり方や、天然ゴムの持続可能性の向上に貢献したメンバーの取り組みの評価や表彰のあり方について協議を進めています。
国際市民団体Solidaridadとの活動
トピック:Project Unnati(インド・ケララ州での持続可能な天然ゴムプロジェクト)
「Project Unnati」は、インド・ケララ州の2つの県(イドゥッキ県及びコッタヤム県)において、持続可能な天然ゴムサプライチェーン構築へ向けたブリヂストンの取り組みの一環として開始しており、2027年までに5,000の小規模ゴム農家の生産能力を高め、生計を向上させると共に、人権や環境に配慮したゴム栽培につながるように支援を行っています。
国際市民団体のSolidaridadによる支援のもと、上記2つの県でニーズを調査し、ゴムの品質、燻煙所やゴムシート作成の改善を実施しています。この支援は、ケララ州で実施されたニーズ調査の結果に基づいており、以下のような成果が期待されます。
a. ゴムシートの品質向上:ゴム農家が供給するゴムシートの総合的な品質が5~7%向上
b. 質の高いサービスへのアクセス改善:4つのゴム生産者協会(RPS)を通じて推進
c. 既存の燻煙所やゴムシート作成への10人の出資者発掘
2024年に取り組んだ主な活動は次のとおりです。
| 活動 | 目的 | 支援対象 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 農場のマッピングを行うため、RPSを通じて農家を動員 | 農場/農家のマッピング | 農家1,011軒 |
| 2 〇 |
間作を活用した副収入の確保と作物多様性の推進 | 収入源の多様化と生物多様性 | 農家159軒(56ヘクタール) |
| 3 | 浸食防止、労働集約型の除草や有害な化学物質の使用を減らすための被覆栽培 | 生物多様性と作業の安定性 | 農家10軒 |
| 4 〇 |
女性ゴム農家への養蜂導入研修 | 収入源の多様化 | 女性農家35軒 |
| 5 | 肥料の無差別使用後の土地の健康状態の回復 | 生産性向上、生物多様性 | 農家108軒 |
| 6 〇 |
アグロフォレストリーと土地の有効活用を通じた農家の起業家精神の育成 | アグロフォレストリー、収入源の多様化、生物多様性 | 農家10軒 |
| 7 〇 |
再生農業推進に向けた実証用農地区画の設置 | アグロフォレストリー、収入源の多様化、Good Agricultural Practiceの推進 | 該当なし(実証用農地10区画) |
| 8 | ゴム農家を対象とした間作、病害虫管理に関する研修 | Good Agricultural Practiceの推進、生産性向上 | 間作:農家159軒 病害虫管理:農家1,011軒 |

〇印がついたプロジェクトの詳細を、下記で紹介しています。
2.間作を活用した副収入の確保と作物多様性の推進
支援対象となるゴム農家を選定し、2024年に間作と作物の多様化を導入しました。この活動の一環として、イドゥッキ県及びコッタヤム県の28のゴム生産者協会に属する159のゴム農家に対し、ココアとコーヒーの苗木2万8千本以上を配付しました。支援対象となった農家の農地の総面積は、56ヘクタールに上ります。この活動を通して土壌の健康状態を改善し、作物の多様化を推進することで、永年作物とゴムの栽培を一体化させ、生物多様性の保全に大きく貢献することを目指しています。
4.女性ゴム農家への養蜂導入研修
ブリヂストン インディア プライベート リミテッド(BSID)によるこの活動は、養蜂に携わる人たちの団体の結成を支援し、女性ゴム農家に技術指導を行う同社の取り組みの実例です。この活動では、合計で35の女性ゴム農家(イドゥッキ県20人、コッタヤム県15人)が研修を受けました。養蜂に携わる人たちのグループの結成やミツバチの群れの作り方、そしてミツバチの巣箱、道具、保護服といった必須道具の入手方法などに関し、総合的なサポートを提供しています。養蜂は、持続可能で低コストでありながらも利益が大きいため、ケララ州の農家には数多くの利点があります。
6.アグロフォレストリーと土地の有効活用を通じた農家の起業家精神の育成
本プロジェクトは、ゴム農園内の未使用の土地を活用して、農家が収入を増やし持続可能な農業を実践するよう、農家を支援することに焦点を合わせ、蜂蜜の加工や家畜の飼育、養鶏などに従事している農家の起業家をサポートしています。
このプロジェクトの対象として、イドゥッキ県とコッタヤム県から10人の起業家が選ばれました。収入源の多様化、製品の品質の向上、持続可能な農業の実践を後押しすることが狙いです。また、地方において起業のチャンスを作り出し、地域密着型の連携を強化し、ゴム農業のエコシステムの全体的なレジリエンスの強化にも役立っています。
7. 再生農業推進に向けた実証用農地区画の設置
ゴム農家に対し、コーヒー/カカオとの混作、新しいゴム栽培、オープン採取、管理された上向き採取、被覆栽培といった再生農業の方法を紹介するため、プロジェクトの第一段階として実証用農地を10区画設置しました。
病害診断技術の開発
世界のゴム農園の9割以上が集中する東南アジアでは、パラゴムノキが根白腐病に感染してしまう被害が深刻化しています。特に、対処が効果的である感染初期段階における診断技術の確立が課題となっていますが、ブリヂストンでは、ドローンや人工知能(AI)を利用した早期診断の技術を開発しました。ブリヂストンは、九州大学とBRIN※と共同で、パラゴムノキの根白腐病に対する予防技術を開発し、天然ゴム農園の生産性向上に貢献することを目指して、研究を開始しました。
※ インドネシア国家研究イノベーション庁(インドネシア語:Badan Riset dan Inovasi Nasional(BRIN))
詳しくは「貢献の最大化」をご覧ください。
天然ゴムサプライチェーンのグリーバンスメカニズム
ブリヂストンは、バリューチェーン全体で信頼できるパートナーと連携し、社会に対する価値を共創することが不可欠であると考えています。 特に森林伐採、児童労働や強制労働のリスクにさらされる懸念のある天然ゴム産業において、グリーバンスメカニズム(苦情受付・解決の仕組み)はバリューチェーン全体の持続可能性を高めるための有効な手段の一つになります。こうした仕組みにより、ブリヂストンの事業に関わるステークホルダーからの意見を集め、お取引先様との関係強化を図り、持続可能なサプライチェーンの構築を進める上での潜在的なリスクや機会についても把握できるようになります。 2022 年には、天然ゴムのサプライチェーンを対象としたグリーバンスメカニズムを構築しました。このグリーバンスメカニズムは、人権や環境の問題を取り扱い、通報者の秘密・匿名性を適宜確保しています。天然ゴムサプライチェーンに関わる内外のすべてのステークホルダーが利用可能で、ブリヂストンの調達ポリシーに基づき、お取引先様や第三者専門機関と問題解決を図るものです。また、必要に応じ、GPSNRとも連携して対応します。ブリヂストンは、グリーバンスメカニズムの透明性を確保するため、ウェブサイトで標準作業手順書(SOP)、苦情受付窓口、苦情への対応状況を公開しています。
2023年には、ブリヂストンのお取引先様1社に対する苦情を受け付けました。国際NGOであるEarthwormの支援を受け、苦情の対象となったお取引先様に連絡し、第三者機関による調査結果、改善のための行動計画、現状を確認しました。 対話に基づいて、2023年6月にグリーバンスリストをウェブサイトに公開し、四半期ごとに対応状況を更新しています。ブリヂストンは、引き続き人権、環境の管理・実践の改善を監視していきます。適切かつ透明性の高い運営を行うことで、お取引先様に対してリスクの是正・軽減や被害者支援を促すことができ、人権リスクの低いサプライチェーンを構築することが、ひいてはブリヂストンへの安定供給につながるものと考えています。
詳しくは「グリーバンスメカニズム
(英語のみ)」をご覧ください。
持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)
ブリヂストンは、サステナビリティの取り組みを着実に進めていますが、さらなる向上のためには業界全体の協力が不可欠だと考えています。そこで、同業他社と共にGPSNRを始動させました。GPSNRを通じて、人権尊重の促進、土地収奪や森林破壊の回避、生物多様性や水資源の保全、天然ゴムの収量の向上、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ向上のための基準づくりを進めています。
天然ゴムの持続可能な調達の強化に向け、影響力があり広範囲に及ぶ貢献をするために、ブリヂストンは、GPSNRにおけるすべての主要な取り組みと議論への関与を深めています。例えば、2021年にGPSNRがポリシーフレームワークを承認したことを受け、ブリヂストンは、GPSNRのメンバー企業がポリシーフレームワークの実施の進捗を報告するための報告要求事項の策定に携わり、中心的役割を担いました。2022年6月のGPSNRの総会では、上記の報告要求事項、メンバーによるポリシーフレームワークの実行を支援する「実施ガイドライン」、天然ゴムの持続可能性を強化する責任をサプライチェーンの全関係者が適切に共有できる、バランスの取れた構造を構築することを目指した「責任共有フレームワーク」が承認されました。2022年後半から2023年にかけて、ブリヂストンは、GPSNRメンバーが自らの持続可能性レベルを情報開示する際に役立つ、業界全体の保証制度の構築を目指す議論を主導しました。この保証制度は、2025年にGPSNRのステークホルダーメンバーにより承認される予定です。
ブリヂストンは、タイヤメーカーを代表して、GPSNRのエグゼクティブコミッティのメンバーとして発足時から参画しており、現在は委員長を務めています。
ブリヂストンは、引き続きGPSNRのメンバーや、NGO、天然ゴムサプライヤー、お客様などの様々なステークホルダーと共に、天然ゴムのサプライチェーンの透明性とトレーサビリティ向上に向けた取り組みを積極的に推進していきます。
紛争鉱物のリスク管理
ブリヂストンの調達ポリシーは、コンゴ民主共和国及びその周辺の紛争地域で採掘されている紛争鉱物(すず、タングステン、タンタル、金)も含めた、全ての原材料を対象としています。ブリヂストンは、400を超える世界の企業や組織が参加する「責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)
」が作成する報告テンプレート(Conflict Minerals Reporting Template(CMRT)、Extended Minerals Reporting Template(EMRT)) を用いて、サプライチェーン全体のリスク評価を行っています。紛争鉱物を含む可能性のある製品のお取引先様には毎年、この報告テンプレートの記入とご提出をお願いしています。製錬業者がRMIによる「責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)」に準拠していないことが疑われる、または確認された場合、サプライヤーは別の調達先、または代替鉱物を見つけ出し、行動を起こすよう最善を尽くす必要があります。
現在、ブリヂストンでは、タイヤ製品の原材料を調達する製錬業者を全て特定できており、いずれの業者も、RMAPに準拠していることを確認しています。今後、調査の結果、ブリヂストンの製品において武装勢力の資金源となっている紛争鉱物の使用が判明した場合には、サプライヤーとのコミュニケーションを通じて速やかに是正処置を講じ、持続可能な調達活動を推進していきます。







