環境 | CO2を減らす

環境長期目標(2050年以降):カーボンニュートラル化

考え方

気候変動への対応が求められる中、社会・お客様のCO2削減ニーズは今後さらに高まっていくと考えています。ブリヂストンは2050年以降を見据えた環境長期目標においてカーボンニュートラル化を掲げ、「CO2削減貢献の拡大」と「CO2排出量の最小化」の両輪で活動を進めています。

「断トツ商品」・「断トツサービス」によるソリューションを提供しながら、原材料調達、流通、お客様の使用時、再利用・リサイクルの過程におけるCO2削減に貢献していきます。お客様・パートナーの皆様と共に社会全体のCO2削減に貢献し、また、お客様のCO2削減やカーボンニュートラル化に寄与することで差別化、競争力強化を図ります。

グローバル目標への貢献

カーボンニュートラル化へ向けたアクション

エネルギー効率の最大化、再生可能エネルギーの使用拡大、サーキュラーエコノミー及びモノづくりイノベーションを推進しながら、社会やお客様、パートナーと共にCO2排出量を最小化するためのソリューションを提供します。

  1. 1.
    CO2排出量の最小化
    対応例
    ・エネルギー効率の最大化
    ・再生可能エネルギーの使用拡大
    ・モノづくりイノベーションの推進
  2. 2.
    CO2削減貢献の拡大
    対応例
    ・商品・サービス使用時のCO2排出量削減に貢献するソリューションの提供
    ・商品の軽量化、リサイクルなどによるバリューチェーンを通じたCO2排出量の削減

マイルストン2030:商品のライフサイクル、バリューチェーン全体を通じた削減促進

2020年までの中期目標「マイルストン2020」では、モノづくりにおけるCO2排出量を、タイヤ使用時のCO2排出削減貢献量が上回ることを目指していましたが、2019年の削減貢献量の実績はモノづくりにおけるCO2排出量を上回り、前倒しでこの目標を達成しました。

2020年に策定した中期目標「マイルストン2030」では、「デカップリング」を念頭に、私たちの生産活動により排出するCO2を総量として削減する目標を設定し、今後事業が成長し続けても、着実に「CO2を減らす」ことを目指しています。商品・サービスを通じたソリューションの提供によりCO2削減への貢献をより一層加速させ、商品のライフサイクル、バリューチェーン全体で削減を進めていきます。

商品のライフサイクル、バリューチェーン全体を通じた削減促進に向けて、生産におけるCO2排出削減にとどまらず、「断トツ商品」・「断トツサービス」によるソリューションにより顧客価値を提供しながら、お客様の使用時、原材料調達、流通、再利用・リサイクルの過程におけるCO2排出量削減に貢献していきます。

Key actions

・CO2削減に貢献する商品及びサービスの開発
・エネルギー効率の継続的改善による総エネルギー消費量の削減
・使用する電力における再生可能エネルギー比率の向上
・モノづくりイノベーションの推進

Focused target

・2030年までに私たちが排出するCO2の総量(Scope 1、2※1)を50%削減する※2
・2030年までにソリューションの提供により、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体(Scope 3※1)を通じて、私たちの生産活動により排出するCO2排出量(Scope 1、2※1)の5倍以上のCO2削減に貢献していく※3

  1. ※1目標は、非継続事業を除く生産拠点からの排出を対象としています。Scope 1は企業が直接排出するCO2(自社工場のボイラーなどからのCO2排出)、Scope 2はエネルギー起源間接排出(電力など他社から供給され、自社で消費したエネルギーに伴うCO2排出)、Scope 3はライフサイクルにおける原材料調達、流通、顧客の使用と廃棄・リサイクル段階のCO2排出量などを指しています。
  2. ※2基準年:2011年
  3. ※3基準年:2020年

バリューチェーンでの温室効果ガス排出量

タイヤのライフサイクルの各段階における温室効果ガス(CO2換算)排出量※1

  1. ※1乗用車用低燃費タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)1本当たりのライフサイクル温室効果ガス排出量=242.5kgCO2e
  2. ※2廃棄・リサイクル段階の温室効果ガス排出量:排出=13.0kgCO2e、削減効果=-15.2kgCO2e
    (出典:「タイヤのLCCO2算定ガイドライン Ver3.0.1」PDF)(2021年12月一般社団法人日本自動車タイヤ協会)

バリューチェーン全体でのCO2削減の取り組み

ブリヂストンの環境長期目標に掲げるカーボンニュートラル化に向けた様々な取り組み推進が、商品のライフサイクル全体を通じた技術の進化、環境負荷の大幅な低減、お客様のCO2削減に繋がっています。お客様が使用する際に排出されるCO2の削減に貢献する商品・サービスとして、商品設計基盤技術「ENLITEN」を搭載した低燃費タイヤや、運行管理サービスを提供するモビリティソリューションの開発、拡充を進めています。こうした取り組みにより、気候変動に対応し、よりサステナブルな社会を構築することを目指します。

段階 取り組み内容
原材料・部品の調達
  • ENLITEN技術適用による製品の軽量化、長寿命化、リトレッドタイヤの販売拡大などによる資源生産性の向上(経済価値当たりの原材料使用量の低減)
  • 持続可能な調達の推進とサプライヤーエンゲージメントを通じたお取引先様におけるCO2削減
  • カーボンフットプリントの小さい原材料の研究開発、導入
生産
  • BCMAを通じた生産性向上
  • 着実な省エネ活動を含むエネルギー原単位の継続的な改善
  • 再生可能エネルギー(電力)比率拡大、最適化
  • Scope1 削減に向けた技術開発・実証(低炭素燃料への転換/プロセスの電化、生産プロセス革新など)
流通(輸送・販売)
  • 輸送ルートや輸送方法など流通戦略の見直し、積荷の最適化を通じた輸送効率の向上
  • CO2排出量が少ない輸送方法・燃料の選択
製品廃棄、リサイクル
  • リデュース;製品の軽量化、長寿命化
  • リユース:トラック・バス・航空機・オフロード用のリトレッドタイヤの技術開発及び普及促進
  • リサイクル:使用済タイヤの有効利用の促進、リサイクル技術の開発
製品使用時
  • 車両の燃費向上とCO2排出削減に貢献するENLITEN技術などを活用した転がり抵抗を低減した高性能タイヤの開発・販売
  • タイヤ・車両の整備やエコドライブに関する啓発活動
  • 装着する建設機械から発生するCO2の削減に貢献する低燃費ゴムクローラの開発・販売
スクロール

モノづくり基盤技術「BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)」
タイヤを構成するモジュール(部材)を3つに集約し、異なる商品間で共有することで、開発・生産を含むサプライチェーンをシンプル化。開発・生産におけるアジリティを向上させながら、コストの最適化や環境負荷の低減を実現します。革新材料・構造によってモジュールを進化させ「究極のカスタマイズ」を支えます。

お取引先様との連携による気候変動への取り組み

タイヤのライフサイクルを通じたCO2排出量の削減を進めるために、ブリヂストンはお取引先様と協働し、様々な取り組みを推進しています。

2018年に策定したブリヂストンの「グローバルサステナブル調達ポリシー」を、外的環境の変化、社会やステークホルダーからの期待や要請を踏まえ改訂しています。最新版のポリシーにおいては、サプライチェーン全体でのCO2削減について、お取引先様に対するエネルギーの使用量と温室効果ガスの排出量削減、削減計画の策定、排出量の報告を含む環境に配慮した調達の促進に関する要求事項を記載しています。

当ポリシーを十分に理解し協力していただくため、ブリヂストンは複数の地域でお取引先様を対象とした説明会を毎年開催しており、2024年の説明会では、グローバルで150社超のお取引先様にご参加いただき、CO2排出量削減、再生可能エネルギーの導入、パリ協定に沿った高い目標の設定など、カーボンニュートラル化に向けてご協力いただきたいことについての説明を行いました。さらに、お取引先様の活動支援のレベルアップを図る新しい取り組みとして、日本、インド、タイのお取引先様を対象に、CO2削減に焦点を当てた勉強会を開催しました。この勉強会では、ブリヂストンがカーボンニュートラル化の目標を掲げた背景、CO2の算出方法、科学的根拠のある目標の設定基準、ベストプラクティスなどを紹介しました。

ブリヂストンでは毎年、お取引先様の活動のモニタリングと、取り組みへのフィードバックの提供を目的に、CO2削減目標及びCO2排出量の状況に関するアンケートを実施しています。2024年は全ての原材料のお取引先様に回答をお願いし、約95%のお取引先様にご回答いただきました。

一部のお取引先様からは新たな削減目標を設定したというご回答もいただいており、当社のサステナブル調達活動全体での進捗把握や今後のエンゲージメント活動に反映しています。また、アンケートを通じグローバルサステナブル調達ポリシーの遵守状況も合わせて確認しています。

さらに、国際的な調査・評価機関であるEcoVadis社と提携して環境・社会・ガバナンス(ESG)課題に関するリスク評価を実施し、お取引先様の活動状況をモニタリングし、評価しています。

ブリヂストンのScope3 カテゴリー1(製品・サービスの購入)におけるタイヤ事業のCO2排出量ベース(2023年実績)

インターナル・カーボンプライシング

ブリヂストンは、2011年からCO2削減のため社内カーボンプライシング(ICP、企業内炭素価格)を導入しています。当社は、ICPの利用により、CO2排出量の低減や増加の影響を投資の意思決定において加味し、カーボンニュートラル化に向けた社内意識の醸成と行動変容を促進していきます。

投資判断におけるICPの利用を各事業領域で標準化・推進するとともに、炭素市場価格等を参考にICPの価格を定期的に見直し、運用の強化を図っています。

2024年時点で、Scope1、2、3を適用範囲として、CO2の価格を1トンあたり100ドルで設定しています。

ブリヂストンは、投資採算検討においてICPを活用することにより、省エネへの投資や再生可能エネルギー(電力)への転換をはじめとするカーボンニュートラル化に向けたCO2排出量削減の取り組みをさらに加速させていきます。

気候変動緩和に向けた考え方とステークホルダーとの連携

ブリヂストンはテクノロジーやビジネスモデル、デザインのオープンイノベーションを推進しながら様々な領域の技術を融合させることで、ステークホルダーとの共創を促進しています。気候変動への対応においても、他団体・企業と共にカーボンニュートラル化へ向けた取り組みを加速させています。日本では、気候変動イニシアティブ(JCI)や東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会に参画しています。ブリヂストンは2021年4月には、パリ協定の目標を実現する野心的な温室効果ガス排出削減目標を日本政府に求めるJCIのメッセージに賛同しました。2030年の削減目標として「45%を超え、50%削減へのチャレンジを」求める同メッセージは、総理大臣、外務大臣、経済産業大臣、環境大臣に対して公開書簡として送付された他、各種メディアを通じて公表されました。また、ブリヂストンが参加している一般社団法人日本ゴム工業会は、産業部門の中心的役割を果たしている一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)「低炭素社会実行計画」に参画し、製造拠点におけるCO2排出削減の中期目標(2030年)達成に向けて取り組んでいます。

2023年には、気候変動対策関連法である「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(現「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律 」)の改正において、再生可能エネルギー由来の電力を使うことでCO2排出量削減に貢献する電化技術の適正な評価に関する意見を提出しました。ブリヂストンは、気候変動関連法を遵守しつつ、カーボンニュートラルに向けた取り組みを強化することで、日本政府のパリ協定に沿った気候変動緩和への取り組みを支持しています。

日本では、企業、日本政府、北九州市からなる「北九州港カーボンニュートラルポート(CNP)検討会」に参画しています。本検討会は、国際物流の結節点かつ産業拠点である北九州港において、温室効果ガス排出を全体としてゼロにすることを目指し、国土交通省九州地方整備局と北九州市によって立ち上げられました。ブリヂストンが参画する本検討会は2022年に、「北九州港カーボンニュートラルポート(CNP)形成計画(素案)」を策定しました。

さらに当社は、気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」で長期的なゴールと位置付けられている「脱炭素社会」の実現に向けて経団連が日本政府と連携して立ち上げたイニシアティブ「『チャレンジ・ゼロ』宣言」に賛同しています。

2024年には、「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」に参加しました。このフォーラムは、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという日本政府の目標を経済成長のチャンスととらえ、企業、政府、大学、学術機関が協力して、温室効果ガス排出の削減目標の達成と産業の競争力の向上を目指しています。ブリヂストンはこの枠組みの参加企業・組織と協力して、経済社会システムの変革に向けた取り組みを推進していきます。

気候変動関連のイニシアティブや組織への参加・検討にあたっては、カーボンニュートラルに向けた目標を含む当社の事業戦略の方向性との親和性を定期的に評価し、大きく乖離する場合には、その関係を再検討します。

気候変動に対する緩和と適応

ブリヂストンは、気候変動に関わる物理リスクを認識し、製造拠点において、事業継続計画(BCP)を含むリスク管理対策を策定しています。また、気候変動が当社事業に与えるリスクと課題を認識し、天然ゴム供給源の多様化に向けた取り組みなどを実施しています。

世界の天然ゴム供給源の多様化に向けて

現在、天然ゴム資源の大部分を担う「パラゴムノキ」の栽培面積は、約9割が熱帯の東南アジアに偏在しています。ブリヂストンは、気候変動による天然ゴム収穫量減少リスクを減らすため、天然ゴム供給源を多様化する研究に取り組んでいます。具体的には、乾燥地域である米国南西部からメキシコ北部が原産の低木「グアユール」からタイヤ原材料用の天然ゴムを抽出する研究を進めています。

「グアユール」に関する詳しい情報は、「アクション3:再生可能資源の拡充・多様化」をご覧ください。

TCFD提言に基づく情報開示の推進

ブリヂストンはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、TCFD提言のフレームワークに沿って特定した気候関連リスクと機会を認識し、事業戦略への反映及び情報開示を進めています。これらのリスク及び機会への認識を踏まえ、カーボンニュートラル化及びサーキュラーエコノミーへの貢献促進に向けて環境中長期目標を策定し、バリューチェーン全体でのCO2の排出量削減など、脱炭素社会への移行リスクの低減に取り組むと同時に、グアユールの事業化に向けた取り組みを通じた天然ゴム供給源の多様化など、適応策による物理リスクの低減についても取り組んでいます。今後はTCFD提言に沿った気候関連アクションの開示対象を広げていきたいと考えています。

TCFD提言に基づく情報開示の詳細は、「TCFD・TNFD対照表」をご覧ください。

CDP気候変動 質問書に対する当社の回答